Search Thermo Fisher Scientific
Search Thermo Fisher Scientific
生物学のセントラルドグマは、遺伝子から取り出された情報がタンパク質の合成に用いられる方式を説明しています。DNA から RNA に転写され、RNA からタンパク質に翻訳されます。このプロセスは遺伝子発現として知られ、すべての生物形態がこれを用いて、遺伝情報からの生物の構成単位を形成しています [1]。
細胞は、どの時点においても遺伝子の選択された部分だけが発現しています。これは、細胞は自身の遺伝子コードをさまざまな方法で解釈できることを意味します。発現される遺伝子をコントロールすることは、大きさ、形および機能のコントロールを可能にすることになります。生物の細胞の自身に含まれる遺伝子の発現のされ方は、生物の表現型(例:マウスの体毛の色や体毛の有無)に影響を与えます[2]。
遺伝子発現プロファイリングは、あらゆる時点においてどの遺伝子が発現されているかを測定します。この手法では、一度に数千もの遺伝子を測定することが可能です。実験によっては、一度にすべてのゲノムを測定できるものもあります [3]。遺伝子発現プロファイリングは、転写レベルでの細胞による遺伝子発現パターンが示されている mRNA レベルを測定します [4]。これは、多くの場合、二つ以上の実験条件において相対的な mRNA 量を測定し、どの条件で特定の遺伝子が発現されるかについて評価することを意味します。
遺伝子発現プロファイリングは、分子生物学者から環境毒性学者まで、さまざまな生物医学研究者に用いられています。この技術は、無数の実験のゴールに向けて、遺伝子発現に関する正確な情報を提供することができます。
遺伝子発現解析にはさまざまな技術が用いられています。これらの技術には、DNA マイクロアレイやシ―ケンシングが含まれます。前者は特定の目的遺伝子の活性の測定、後者は細胞内のすべての活性遺伝子の決定を可能とします [5]。
ゲノムをシ―ケンシングすると、含まれている遺伝子に基づいて、細胞がどのような特性や機能を持っている可能性があるかを知ることができます。しかしながら、ゲノムをシ―ケンシングしても、どの遺伝子が発現しているかや、あらゆる時点において機能やプロセスが働いているかを知ることはできません。これらについて特定するためには、遺伝子発現プロファイルを解析する必要があります。遺伝子が mRNA の生成に使用されている場合は その遺伝子は「on」、遺伝子が mRNA の生成に使用されていない場合は その遺伝子は「off」と考えられます。
遺伝子発現プロファイルでは、特定の時点において、細胞がどのように機能しているかがわかります。なぜなら、細胞遺伝子発現は、細胞が分裂しているかどうか、細胞環境にどの因子が存在しているか、他の細胞から受け取ったシグナルや 1 日の時間帯さえも含めて外的および内的刺激に影響されるためです [6]。
遺伝子発現プロファイリングは、細胞を曝露させる環境を変えて、どの遺伝子が発現しているか解析することによって、遺伝子発現に対するさまざまな条件の影響を調べることを可能にします。あるいは、特定の細胞挙動に関与している遺伝子が既知の場合、遺伝子発現プロファイリングは、細胞がこの機能を発揮しているかについて判断するための手助けをします。例えば、ある遺伝子が細胞分裂に関与していることが知られており、細胞においてこれらの遺伝子が活性化されている場合、その細胞が分裂中であるか、あるいは細胞が分化されていることがわかります [7、8]。
遺伝子発現プロファイリングは、仮説の生成によく使用されます。遺伝子が発現される時期と理由についてほとんど不明である場合、今後の実験でテストするための仮設を立てるのにさまざまな条件下の発現プロファイリングが役立ちます。例えば、その細胞を他の細胞に曝露した場合のみに遺伝子 A が発現する場合、この遺伝子は細胞間情報伝達に関与すると考えられます。さらなる実験で、この仮説が合っているかを判断することができます [4]。
遺伝子プロファイリングは、薬物様分子の細胞応答への影響についても調べることができます。薬物代謝の遺伝子マーカーを同定したり、あるいは薬物に曝露した際に有害環境に対する応答への関与が知られている遺伝子を細胞が発現するかどうかを判定することができます [4]。
遺伝子プロファイリングは、診断ツールとしても使用されます。がん性細胞が特定の遺伝子を高レベルで発現していて、これらの遺伝子がタンパク質受容体をコードしている場合、この受容体はがんに関与している可能性があり、その受容体を標的にすることは その疾患を治療することにつながる可能性があります。その場合、遺伝子発現プロファイルは、このがんに罹患した患者の重要な診断ツールになることが考えられます [9]。
RNA 発現パターンは、特定のバイオマーカーに基づいてヒトの疾患を予測・分類するための鍵となります。外的刺激、環境変化、および遺伝子損傷に対する細胞応答を理解するには、遺伝子発現の変化を解析することが基本となります [10]。
次世代シ―ケンシングを用いたトランスクリプトームの配列決定は、どの遺伝子が関与しているかの知識を必要せずに発現変動遺伝子を発見することを可能とします [11]。
タンパク質コード RNA は重要な情報ソースですが、非コードタンパク質 RNA も重要です [12]。次世代 RNA シ―ケンシングには、以下のような利点があります。
qPCR を用いた mRNA の定量は、Applied Biosystems TaqMan® プローブベースの解析および Applied Biosystems SYBR Green 色素ベースの解析にデジタル PCR(次の項目を参照)を組み合わせて実施することができます [13]。
qPCR は 2 倍程度の遺伝子発現の差異を検出するのに有用ですが、発現量の差が 2 倍もないようなわずかな差異を識別するためには別のアプローチが必要とされます。デジタル PCR(dPCR)は、わずかな遺伝子発現の差異の検出に使用できます。 dPCR は、以下を可能とします。
細胞において特定の遺伝子が発現していることを知ることにより、細胞がどのように機能しているかについての多くの情報や、特定の細胞挙動に関与する遺伝子(および発現されるタンパク質)についての潜在的な新しい知見が得られます。しかしながら、遺伝子は ただ 一つのタンパク質をコードしているわけではありません [14]。ヒトゲノムには、約 20,000 のタンパク質コード遺伝子が存在し、これらの遺伝子からさらに多くのタンパク質が恐らく 200 万のオーダーで生成します [15]。この理由の一つとしては細胞において翻訳後修飾が生じることで転写-翻訳プロセスによって生成したタンパク質は変化していること、また別の理由としてスプライシングによって同じ遺伝子からさまざまなタンパク質が生成していることが挙げられます [16]。
私たちは、mRNA プロファイルによって細胞機能を確証することだけでなく、さらに多くの情報を必要とします。例えば、プロテオミクス実験を通して、細胞中で生成している数多くのタンパク質を解明することは有用と考えられます [17]。しかしながら、いまだに遺伝子発現プロファイリングは、1 回の実験から細胞の機能を解明するのには最適な方法です。
遺伝子発現プロファイリング研究についてレポートする際は、実験条件下で有意に異なる発現プロファイルを持つ遺伝子をレポートするのが一般的です。以下の理由から、これは限定的です。
遺伝子発現プロファイリング実験において収集されたデータの解析は複雑になり得ます。しかしながら、発現プロファイリングからは さまざまな条件下で発現された遺伝子に関する情報が得られ、仮説を立てて検証することを可能にします。データを解析することは学際的な仕事となり、多変量統計解析を行う生物統計学者による鍵となるサポートを受ける必要があるでしょう。
リアルタイム PCR を始めたばかりの方やこの技術の基本原理について学びたい方にうってつけのハンドブックです。 この第 3 版は、全 70 ページ、6章で構成されており、実験デザイン、データ解析、リアルタイム PCR のコツ、トラブルシューティングなどのトピックが含まれています。
リアルタイムPCRの実験中に、よく起こるトラブルに対する解決方法をまとめたものです。全15ページ、5章で構成されており、異常な増幅が見られた場合、増幅しなかった場合などへの対処法が記載されています。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.