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細胞に核酸を導入するためには、数多くの生物学的、化学的、物理的な手法が存在します。これらのすべての手法がをすべてのタイプの細胞および実験アプリケーションに適用するわけではなく、トランスフェクション効率、細胞毒性、正常な生理機能への影響、および遺伝子発現レベルに応じて対応する幅広いバリエーションが存在します。しかしながら、すべてのトランスフェクション戦略は、導入された核酸が細胞内に存在するのが限られた期間であるか(一過性トランスフェクション)、あるいは長期間にわたり細胞内に存続し、トランスフェクションした細胞の子孫に引き継がれるか(安定トランスフェクション)の大きく2つのタイプに分類することができます。
一過性トランスフェクションでは、導入された核酸は限られた期間だけ細胞内に存在し、ゲノムには組み込まれません。このように、一過的にトランスフェクションされた遺伝子物質は細胞分裂を介して世代から世代へと受け継がれることはなく、環境因子によって失われるか、細胞分裂を通して希釈されます。しかしながら、高コピーでトランスフェクションされた遺伝子物質は、その期間、高レベルの発現タンパク質を細胞内に存在させることにつながります。
使用するコンストラクトによりますが、一過的に発現される導入遺伝子は一般的に 1 ~ 7 日間にわたり検出され、一過的にトランスフェクションされた細胞は通常トランスフェクション後 24 ~ 96 時間以内に回収されます。遺伝子産物を解析するには、酵素活性アッセイやイムノアッセイに使用するRNAやタンパク質を分離することが必要となります。最適な期間の間隔は、細胞の種類、研究目標、導入された遺伝子特有の発現特性、ならびにレポーターが安定な状態に到達するまでの期間に依存します。しかしながら、大部分の外来 DNA は、2~3日以内にヌクレアーゼによって分解されるか、細胞分裂によって希釈され、1 週間後にはその存在は検出されなくなります。一過性トランスフェクションは、スーパーコイルプラスミド DNA が用いられる場合に、より効率的に細胞に取り込まれると想定され、もっとも効率的と考えられます。siRNA、miRNA、mRNAに加え、タンパク質でさえもプラスミド DNA と同様に、一過性トランスフェクションに用いることが可能ですが、これらの高分子は、高品質で比較的純度が高いことが必要とされます(トランスフェクション効率に影響する因子を参照)。トランスフェクションされた DNA は核に移行し、転写されるのに対し、トランスフェクションされた RNA はサイトゾルに残り、そこでトランスフェクション後数分以内に発現するか(mRNA)、mRNA に結合して標的遺伝子(siRNA および miRNA)の発現を抑制します(RNA トランスフェクションのガイドライン)。
安定トランスフェクションでは、外来 DNA は細胞内ゲノムに組み込まれるか、エピソーム性プラスミドとして維持されます。一過性トランスフェクションとは異なり、安定トランスフェクションは、長期間にわたり外来 DNA をトランスフェクションされた細胞内およびその子孫に維持することが可能です。このように、安定トランスフェクションは、複数世代にわたり導入した遺伝子を持続的に発現させることを可能とします。これは、組み換えタンパク質の生産、あるいは外来 DNA 発現の下流や長期的影響の解析に有用です。しかしながら、通常、安定的にトランスフェクションされた細胞のゲノムに組み込まれるのは、1または2~3コピーの外来 DNAです。このため、安定的にトランスフェクションされた遺伝子の発現レベルは一過的にトランスフェクションされた遺伝子の発現レベルよりも低い傾向があります。
外来 DNA が安定的にゲノムに組み込まれることは比較的稀なイベントであるため、安定トランスフェクションを成功させるためには、効率的な DNA 導入とその DNA を取り込んだ細胞を選択する方法が必要とされます。トランスフェクションされた DNA が安定的に発現している細胞を選択するためのもっとも信頼できる方法の1つは、トランスフェクションに用いられる DNA コンストラクト上に選択マーカーを含ませて、短い回復期間後に細胞に適切な選択圧をかけることです。
頻繁に使用される選択マーカーは、さまざまな選択薬剤に対する耐性を与える遺伝子、あるいはトランスフェクションされる細胞株に置いて欠損している必須遺伝子を補う遺伝子です。選択培地で培養すると、選択マーカーが導入されていない細胞、あるいは一過的にトランスフェクションされた細胞は最終的に死滅し、抗生物質耐性遺伝子を十分なレベルで発現している細胞または必須遺伝子の欠失が代償されている細胞は生存します。他の方法として、特定のケースにおいて、トランスフェクションされた細胞における表現型または形態の変化をスクリーニング可能な形質として用いることができます。たとえば、ウシパピローマウイルスに由来するベクターでトランスフェクションされたマウス CI127 細胞は、形態変化を生じます(Sarver et al.1981)。
直鎖状 DNA の細胞へのDNA 取り込み量はスーパーコイル DNA に比べて低いですが、宿主ゲノムへの最適な DNA 組み込みを生じます(トランスフェクション効率に影響する因子を参照)。一般に、安定トランスフェクションは DNA ベクターに限定されますが、siRNA および miRNA を選択可能な DNA ベクターから作製した短いヘアピン転写物として導入されると、siRNAおよびmi RNA が安定的に細胞に導入されきます(ベクター媒介 RNAiを参照)。しかし、RNA 分子はそれだけでは安定トランスフェクションに使用することはできません。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.