2005 年の市販開始以降、Thermo Scientific Orbitrap 技術は、信頼性の高い正確な超高分解能(> 100,000)質量分析を実現できる標準技術として認められています。Orbitrap ベースのプラットフォームは、優れたダイナミックレンジと卓越した感度を兼ね備え、これらすべてのメリットを妥協なく同時にご提供できる唯一の MS システムです。


Orbitrap 機能

Orbitrap 質量分析計は高感度で、1,000,000 FWHM の優れた分解能と、最大 40Hz のスキャン速度を誇ります。Orbitrap は、C トラップから放出されたイオンを、中央のスピンドル電極の周りで放射状にトラップすることで動作します。

Orbitrap 質量分析計の高分解能、質量の正確さと感度は、イオン注入プロセスとの緊密な統合、EThcD などのさまざまな断片化オプション、およびセグメント化した四重極質量フィルターなどのいくつかの技術的進歩によって実現されています。最新の Orbitrap Fusion Lumos にも、革新的なイオン源、高度なアクティブビームガイド、高度な四重極技術、高度な真空技術が採用されています。


Orbitrap 技術の詳細

すべての Orbitrap ベースのシステムの中でもっとも高い分解能(m/z 200 で最大 1,000,000)を実現している Orbitrap Fusion Lumos Tribrid 質量分析計に採用されている Orbitrap 技術をご紹介します。Orbitrap Fusion Lumos Tribrid MS は、高度な四重極技術、デュアルプレッシャーリニアイオントラップ、超高電界 Orbitrap 質量分析計を搭載しています。このトリプル分析システムは、Orbitrap とリニアイオントラップ MSn の両方の分析で最大 40 Hz のデータ取得を実現し、TMT 技術によるマルチプレックス分析、MS 検出器の迅速なスキャンも可能です。また、複数のフラグメンテーション技術を提供し、高感度のため、微量タンパク質にも幅広く対応します。

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1)革新的なイオン源大容量イオントランスファーチューブ(HCTT):Ion Max NG イオン源は、調節可能な加熱型エレクトロスプレーイオン化(HESI)プローブを備えており、HCTT は、真空システムへのイオン流束を増やし、感度を向上させます。

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2)電気力学的イオンファンネル(EIF):EIF は、HCTT の後でイオンを集中させ、真空システムへのイオン流束を増やします。また、エレクトロスプレーイオン化源の感度を向上させることで、検出限界を下げることができます。

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3)EASY ETD イオン源:タウンゼント放電に基づくこのコンパクトなイオン源は、きわめて安定した陰イオン流束により、使いやすさの向上と試薬寿命の延長を実現します。

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4)高度なアクティブビームガイド(AABG):軸方向電場と低域通過フィルタリングを特徴とするこの技術は、ノイズを低減し、中性イオンや帯電したクラスターが四重極質量フィルターに混入するのを防止します。

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5)高度な四重極技術:セグメント化した四重極は、高度な四重極技術を採用し、選択したイオンを対称的かつ効率的に移送して、定量の精度を高めます。

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6)高電界 Orbitrap 分析計:Orbitrap 質量分析計は、m/z 200 で最大 1,000,000 FWHM の優れた分解能設定を誇り、低分子検体の元素組成を確実に特定することができます。

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7)高度な真空技術(AVT):Orbitrap 質量分析計へのイオンの移送を増やし、その中で取得した質量スペクトルの質を高めることで、最適な分析条件を作り出します。

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8)イオンルーティング多重極(IRM):動的スキャン管理機能によってコントロールされる IRM は、実効スキャン速度を向上させ、イオントラップおよび Orbitrap 質量分析計でパラレル検出を促進し、あらゆる MSn 段階で HCD を実行します。

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9)電子移動解離(ETD HD):高品位 ETD は、ETD スペクトルのダイナミックレンジを向上させるために大容量のイオン間反応を取り入れているため、ETD/EThcD 実行時のダイナミックレンジおよび検出限界が改善されます。

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10)デュアルプレッシャーリニアイオントラップ:MSnHCD、CID、および ETD の断片化、さらに最大 40 Hz のスキャン速度で、高速、高感度の質量分析を実現します。Synchronous precursor selection により、装置の S/N 比が向上します。


お客様に適した Orbitrap システムは?

サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、Orbitrap ベースの MS システムの充実したラインアップを揃えています。装置によっては、高分解能 MS フルスキャンに対応した Orbitrap 質量分析計のみが含まれます。これらのシステムの一部は、Orbitrap 質量分析計と四重極質量フィルターを組み合わせたハイブリッド構造をベースとしており、検体の高分解能精密質量プロファイリングによるプリカーサイオン選択を可能にします。それ以外にも、三つのアナライザー(Orbitrap、四重極、イオントラップ)の分析機能を一つの装置プラットフォームに搭載し、使いやすさを追求したトライブリッドシステムもあります。これらのプラットフォームでは、トライブリッドの性質を活用した複数のフラグメンテーション技術、マルチプレックス分析(一つの分析計でイオンの同時分離を行い、他の二つの分析計で検出を行う並列分析)、Synchronous precursor selection(SPS)を通じて、機能が強化されています。

これらは m/z 200 で比較されました。

各 Orbitrap ファミリーの詳細情報

Exactive Plus Orbitrap システムから Orbitrap Fusion Lumos Tribrid 質量分析計に至るラインアップを揃えています。ラボのニーズに適した装置を確認するには、各ファミリーをクリックして詳細をご覧ください。

Orbitrap ファミリーを確認

システムMS/MS1精度2スキャン速度3分解能4感度5質量範囲6解離手法7TMT マルチプレックス8SPS9
 
トライブリッド
Fusion Lumos Tribrid
30

500
CID、HCD、ETD、HD、EThCDYesYes
Fusion Tribrid
30

500
CID、HCD、ETD EThCDYesYes
 
ハイブリッド
Orbitrap Elite
4Hz

340

50 ~ 2,000;
200 ~ 4,000
CID、HCD、ETDNoNo
Q Exactive HF
18

240


50 ~ 6,000
HCDYesNo
Q Exactive Plus
12

140


50 ~ 6,000
HCDYesNo
Q Exactive
12

140


50 ~ 6,000
HCDYesNo
Q Exactive Focus
12

70


50 ~ 6,000
HCDNoNo
 
Exactive
Exactive Plus EMR
12

140

50 ~ 6,000;
350 ~ 20,000
AIFNoNo
Exactive Plus
12

140

50 ~ 6000
AIFNoNo
  1. タンデム MS(MS2)では、プリカーサイオン選択に続いて、フラグメントイオンへの解離という複数段階を前段の MS にて行われます。その後、イオンは 後段の MS へと至ります。タンデム MS では、検体を同定するための情報が生成されます。
  2. 実測の質量と理論的なモノアイソトピック質量の違い。単位は 100 万分率(PPM)。
  3. 装置がどれだけ迅速にデータを収集できるか(1 秒当たりに実行できるスキャンの回数) をヘルツ単位で定量します。
  4. 分解能と質量精度により、高い選択性(バックグラウンド干渉から対象の化合物を分離する能力) が実現されます。
  5. 指定の検体濃度での検出器の応答であり、通常はフェムトグラムで表されます。
  6. 質量分析計を通過するイオンの質量電荷比。
  7. 複数のフラグメンテーション法により、リン酸化、アセチル化、グリコシル化など、PTM を測定および定量するための新しい実験アプローチが可能になります。
  8. TMT マルチプレックス分析では、同重体タグを利用して複数のサンプルを同時分析し、MS/MSにより生じたレポーターイオンで相対定量を行います。1 日に 100,000 以上のタンパク質の定量が可能です。
  9. Synchronous Precursor Selection では、複数の MS2 フラグメントを選択できるため、MS3 スペクトルのレポーターイオンの数が増えます。

Orbitrap 技術が適しているアプリケーションは?

HRAM 性能により、Orbitrap は新規の非標的化合物をサブ ppb の濃度で検出、またはサブ ppm の質量差で解明することに関して高い評価をいただいている質量分析計です。Orbitrap は研究アプリケーションで、プロテオミクス、リピドミクス、臨床研究、法医中毒学、食品および飲料、環境ラボで収集された、低含量の複雑なサンプルや分析が困難なサンプルを解明するのによく使用されます。これは、高分解能が低濃度検体の擬陰性を避けることができるためです(アイソバリック干渉のマスキング効果により)。


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