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医薬品製造のためのカウンターイオン分析
なぜカウンターイオンを測定するのか？
市販医薬品の 50％以上がカウンターイオンを使用しているため、カウンターイオンの分析は医薬品開発、品質管理、ロットリリースプロセスにおいて、患者の安全と薬物の効能を確認するために欠かせない部分です。
医薬品およびバイオ医薬品の開発において、優れた生物学的利用能を確保するために溶解性、薬剤安定性、溶解速度などの物理化学的特性の選択的標的化を可能にする塩の形態が重要です。さまざまな無機イオンと有機イオンを医薬品有効成分（API）のカウンターイオンとして使用できます。API がプロトン化されているか脱プロトン化されているかによって、陰イオンまたは陽イオンのカウンターイオンが必要となります。これらの多様なカウンターイオンを検出するために一般的に使用されている分析技術は次の二つです。
- イオンクロマトグラフィー（IC）と電気伝導度検出
- 超高性能液体クロマトグラフィー（UHPLC）と荷電化粒子検出（CAD）／UV 検出
IC と UHPLC はどちらも薬物の塩（カウンターイオン）検出が可能ですが、どちらの技術を選ぶかは分析の種類と必要となる情報やサンプルスループットによって異なります。
イオンクロマトグラフィー
IC を使用した陰イオンおよび陽イオンの測定は通常、 サプレッサー付電気伝導率検出方式を使用して移動相からの干渉を低減する一方で検体の反応を高めます。スタンダードボアカラムからキャピラリーカラムに変更することで迅速な分離と定量情報が得られます。さらに、システムの起動と平衡化の時間を短縮することができます。
無機カウンターイオン分析には、感度と選択性から一般にイオンクロマトグラフィーが使用されます。下記の例は、二型糖尿病の判定に一般的に使用される薬物からの塩化物カウンターイオン測定例を示しており、コレステロール値の抑制に使用される薬物から三つのカウンター陽イオンが検出されています。
Inorganic counteranion determination
Inorganic countercation determination
有機対カウンターイオン分析の場合、IC はその選択性によって極めて高い感度を提供できます。多くの有機酸は UV 検出器の感度が低いため、または反対に UV 吸収率が高く干渉が大きすぎるために、分析が困難なことがあります。
左記の例はベンゼンスルホン酸の高速分離を示しています。ベンゼンスルホン酸は、高血圧や扁桃炎の治療に用いられるアムロジピンベシル酸塩の一部を形成する有機カウンターイオンです。
IC は多くの 米国薬局方の基礎を形成し、一般に時間のかかる滴定ベースのアッセイに基づく多数の薬局方を現代化するものと位置づけられています。この点の例として、 水酸化リチウム医薬品の米国薬局方の現代化が挙げられます。この例では IC は要求される限界を容易に上回り、同じアッセイでカルシウムを測定する機能も提供することが示されました（図はカルシウムのピークを強調するため拡大されています）。
超高速液体クロマトグラフィー（UHPLC）
UHPLC は、優れた柔軟性、幅広い溶離液とカラム、検出オプションによって、普遍的な分離分析を実現できます。従来はカウンターイオン検出に使用されていなかった UHPLC ですが、荷電化粒子検出、さらに強力な分離メソッド、IC に比べ短い時間でより多くの情報を提供する機能の追加により、現在はカウンターイオン検出に使用されることが増えています。
IC は陰イオンと陽イオンを個別に測定する必要があり、専用の装置を設置するのに十分な検体数があるラボに適しています。
さらに複雑な医薬品が市販されるようになる中で、UHPLC は同じ分析内で陽イオン種と陰イオン種の両方を分析して検出する機能と、ラボ内でさまざまな他の種類の分析を実施する機能を提供します。
例として、一般的な無機カウンターイオンの親水性相互作用液体クロマトグラフィー（HILIC）分離と CAD 検出を左図に示します。
典型的な無機／有機カウンターイオンの問題の一つに、発色団がないため UV 検出器を使用できないという点がありました。CAD では、全分子種を帯電化することが測定の原理であるため、発色団が不要であり、応答特性が濃度に比例します。CAD は製剤の半揮発性／非揮発性化合物をすべて検出する機能を備えているため、ユニバーサル検出器と呼ばれることもあります。
UV および CAD 検出の両方を活用できる UHPLC システムには、カウンターイオンだけでなくあらゆる不純物も含めて検出できるという利点もあります（これについては、 Adderall® の分析図を参照）。カラム単体の化学特性により陰イオンと陽イオンの両方のイオン交換クロマトグラフィーが可能なため、メソッド開発と最適化に高い柔軟性をもたらし、カウンターイオンの同時検出を効率的に行える完全なソリューションといえます。
カウンターイオン分析の信頼性を高めるには
カウンターイオン分析に絶対的な信頼性を求める方に朗報です。UHPLC だけでなく IC も質量分析計（MS）と組み合わせることができます。質量分析計を利用できるので、化合物の同定が確実に行え、選択性も高めることができるので、検出限界をさらに低くすることも可能です。
シングル四重極およびトリプル四重極質量分析計から高分解能質量分析計まで、各ラボの要件に応じてさまざまな選択肢があります。
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