正確な導電率、抵抗率、塩分濃度およびTDSの測定

導電率メーターおよびプローブを使用して、さまざまな関連パラメーターの一貫した測定値を得ることができます。Thermo Scientific Orionベンチトップ導電率メーター、ポータブル導電率メーター、および導電率プローブは、廃水、飲料水、超純水または脱イオン水を必要とする水質ラボアプリケーション、定置洗浄(CIP)、産業洗浄水およびすすぎ水、発電、鉱業用などの製造工程、注射用の水などの医療用、水産養殖や食品および飲料などのその他の用途に適しています。


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導電率とは?なぜ測定すべきなのでしょうか?

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導電率はイオンの濃度と温度によって異なります。

電気伝導度はほとんどの材料に固有の特性であり、金属などの非常に導電性の高い材料から、プラスチックやガラスなどの非導電性の材料まで多岐に及びます。これらの導電性、非導電性材料の中間的な物質として、海水やめっき浴などの水溶液があげられます。金属では電流が電子によって運ばれ、水中では荷電イオンによって運ばれます。どちらの場合も、導電率は電荷キャリアの数、それらの移動速度、およびキャリアの容量によって決まります。したがって、ほとんどの水溶液では、溶存塩からのイオン濃度が高いほど、一般的に導電率が高くなります。溶液中のイオンの量が多くなりすぎて、イオンが自由に移動できなくなるまで、導電率はイオン濃度の増加とともに上昇します。その後、導電率は、イオン濃度の上昇とともに低下する場合があります。これにより、2種類の濃度の塩が同じ導電率となる可能性があります。

コンダクタンスは抵抗の逆数と定義され、ジーメンス(S)単位で測定されます。以前はmho(オームの逆さ綴り)と呼ばれていました。導電率は、どのような溶液にも固有の特性です。測定により、サンプルのコンダクタンスを得て、これを導電率に変換します。これは、既知の導電率の標準液を使用して、各セットアップのセル定数(K)を決定することで行います。

導電率=(セルコンダクタンスxセル定数)

セル定数は、測定セルの物理的特性に関連しています。2つの並列した平らな測定電極で構成されるセルの場合、Kは電極分離距離(d)を電極面積(A)で割った値として定義されます。

実際の使用では、測定されたセル定数が(直接またはユーザーによる校正により)メーターに入力され、メーターで、コンダクタンスから導電率への変換が計算されて表示されます。

アプリケーション

導電率メーターは、電流が流れるための水溶液中のイオンの量を測定します。水溶液の測定範囲は通常小さいため、測定の基本単位はミリジーメンス/cm(mS/cm)およびマイクロジーメンス/cm(μS/cm)です。導電率は、家庭用消費、廃水、水質検査、産業用など、水の供給に含まれる不純物のレベルを測定するために広く使用されています。この方法を採用している業界には、化学、半導体、発電、病院、繊維、鉄鋼、食品および飲料、鉱業、電気めっき、パルプおよび製紙、石油および海洋産業などがあります。具体的なアプリケーションには、化学ストリーム、脱塩装置出力、逆浸透、ストリームボイラー、凝縮水の戻り、廃液ストリーム、ボイラーブローダウン、冷却塔、脱塩、ラボ分析、果物の皮むき、および海洋学における塩分濃度の検出などがあります。下の表は、溶液の例とその既知の導電率を示しています。

溶液導電率
超純水0.055 μS/cm
発電所ボイラー水1.0 μS/cm
良質な上水道50 μS/cm
海水53 mS/cm
蒸留水0.5 μS/cm
脱イオン水0.1~10 μS/cm
脱塩水0~80 μS/cm
飲料水0.5~1 mS/cm
廃水0.9~9 mS/cm
海水53 mS/cm
10% HCI700,000 μS/cm
32% HCI700,000 μS/cm
31% HNO3865 mS/cm
※mS/cm = センチメートルあたりミリジーメンス
μS/cm = センチメートルあたりマイクロジーメンス
  • 導電率測定は、サンプル中に存在する溶解したイオンの量を測定するために使用します。水中では、このイオン量が水質の指標になります
  • 導電率測定は一般的に単純なものですが、温度を考慮しないと、生成されるデータの妥当性に大きく影響します。温度補正を行うことにより、測定の信頼性と精度を確保するのに役立ちます。温度補正は、測定されたサンプルの導電率と温度の測定値を使用し、係数またはアルゴリズムを適用して、選択した基準温度でのサンプルの導電率値を計算し、報告します。25℃で報告された場合、これは特異的コンダクタンスと呼ばれています。

抵抗率とは?なぜ測定すべきなのでしょうか?

抵抗率

溶液の抵抗率は、電流に対する抵抗の強さを示します。つまり、導電率の逆です。抵抗率を測定するもう1つの一般的なアプリケーションは、超純水の製造時です。超純水は、抵抗率が高く(25℃で>18.18 MΩ∙cm)、したがって導電率が非常に低い(25℃で0.055 µS/cm)ことがしめされます。導電率測定は導電率プローブとメーターを用いてのみ正確に測定でき、これにより電気を伝導できないという信頼性が得られます。

抵抗率の測定

抵抗率は、脱イオン水、蒸留水、または逆浸透水などの精製水で作業する際や製造する際に測定する重要なパラメーターです。アプリケーションに応じて、精製水は、試薬水、試薬グレード水、臨床ラボ試薬水、またはタイプI水とも呼ばれることがあります。純度によっては、その他の用語が適用される場合もあります。超純水は、抵抗率が高く(25℃で>18.18 MΩ∙cm)、したがって導電率が非常に低くなっています(25℃で0.055 μS/cm)。超純水は、ラボ、製薬、半導体、ボイラーなどのアプリケーションによく使用されます。

次のWebセミナーを視聴して、導電率が超純水の製造にどのように影響するかをご覧ください:俗説と真実:超純水のpHと導電率

有機化合物導電率、µS/cm温度(℃)
ギ酸(4.94%)5,50018
酢酸(50%)74018
ラテックス塗料70025
水、ニューヨーク市7225
コーンシロップ1632
アセトニトリル720
ウォッカ、100プルーフ425
イソプロパノール3.525
糖溶液、純粋310
ベンジルアルコール1.825
メタノール0.4418
グリコール0.3025
グリセロール0.06425
酢酸(99.7%)0.04018
エタノール<0.01025
オイル:植物、燃料、100%バイオディーゼル<0.01025
塗装、エナメル<0.01025

総溶解固形物とは?なぜ測定すべきなのでしょうか?

溶解固形物

「総溶解固形物(TDS)」とは、水中に溶解した鉱物、塩類、金属の総量を指します。

飲料水のTDS濃度が高いと、不快な味がします。そのため、多くの国では、飲料水中のTDSに対して推奨最大濃度を設定しています。TDSはまた、河川、湖、池などの流域水源の水質モニタリングにも使用されます。TDSが高い場合は、硬水、汽水または塩水、および/または水の栄養塩負荷を示している可能性があります。硬水は、産業、水槽、温泉施設、プール、逆浸透水処理システムには適していない可能性があります。汽水や塩水は、農業、水栽培、水産養殖には適していない可能性があります。栄養塩負荷は、水域の健全性を損ない、飲料水源としての使用に影響を与える可能性があります。

TDSは通常、重量測定、化学分析、または導電率によって決定されます。

  • 重量測定 – 重量測定プロトコルでは、ろ過したサンプルの量を約100℃で乾燥状態に蒸発させてから、180℃で一定の重量に乾燥させる必要があります。皿の重量の増加は、ろ過されたサンプル量あたりの総溶解固形分を表します。
  • 化学分析– 化学分析プロトコルでは、主要イオン(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、塩化物、硫酸塩、リン酸塩、フッ化物など)や、硝酸塩やアルカリ度などのパラメーターについてサンプルを測定する必要があります。結果はTDSの計算に使用されます。
  • 導電率– 導電率プロトコルでは、導電率測定のみが必要です。この測定値に係数をかけると、簡単な式つまり、TDS = k EC(25℃)となり、kは測定対象の水の種類の関数、ECは導電率です。

3つの一般的なTDS測定プロトコルのうち、導電率のみが現場試験や連続モニタリングに適しています。さらに、測定がより迅速かつ簡単で、良好な結果を得るためにトレーニングはほとんど必要ありません。

Orion Starポータブル導電率メーターVersa Star ProまたはOrion Star AベンチメーターOrion導電率プローブと組み合わせることで、サンプルの推定TDS値をmg/L単位で簡単に測定できます。メーターは自動的に導電率を読み取り、選択したTDS係数を掛けます。データは、メーターのメモリーに自動または手動で保存して、後でダウンロードできます。

 

ミリジーメンス/cm

マイクロジーメンス/cm

温度
(℃)
111.9 mS/cm導電率標準液(mS/cm)12.9 mS/cm導電率標準液(mS/cm)1,413 µS/cm導電率標準液(µS/cm)147 µS/cm導電率標準液(µS/cm)100 µS/cm導電率標準液(µS/cm)
065.107.1357768154
166.847.3447998356
268.597.5558228658
370.357.7688468859
472.127.9838709161
573.918.2008949363
675.708.4189189664
777.508.6389439866
879.328.86096810168
981.159.08499210370
1082.989.3091,01710672
1184.839.5351,04310873
1286.699.7631,06811175
1388.569.9931,09411477
1490.4510.221,11911679
1592.3410.461,14511981
1694.2410.691,17112283
1796.1510.931,19812585
1898.0811.161,22412787
19100.011.401,25113088
20102.011.641,27713390
21103.911.881,30413692
22105.912.121,33113894
23107.912.361,35814196
24109.912.611,38614498
25111.912.851,413147100
26113.913.101,441150102
27115.913.351,468153104
28117.913.591,496156106
29120.013.841,524159108
30122.014.091,552161110
31124.114.341,580164112
32126.214.591,608167114
33128.314.851,636170117
34130.415.101,665173119
35132.515.351,693176121
36134.615.611,722179123
37136.715.861,751182125
38138.916.121,780185127
39141.016.371,808188129
40143.216.631,837191131
41145.416.891,866194134
42147.617.151,896197136
43149.817.401,925200138
44152.017.661,954203140
45154.217.921,983206142
46156.418.182,013209145
47158.718.442,042212147
48160.918.702,071215149
49163.218.962,101219151
50165.419.222,130222154

塩分濃度とは?なぜ測定すべきなのでしょうか?

塩分濃度

導電率は、感度が高く測定が容易なため、海水の塩分濃度を測定するためにもっとも一般的に使用される方法と言われています。実用塩分スケールが海洋学者らに採用された際、彼らは塩分濃度を次のように定義しました:塩分濃度35の海水(S = 35)は、15℃および1気圧において、1 kgの溶液中に塩化カリウム32.4356グラムを含む溶液と、導電率比が1である。この塩分濃度の値は、海水サンプルの広範な測定によって求められました。したがって、実用塩分濃度の測定値は、標準的な塩化カリウム(KCl)溶液に基づく相対値です。

塩分濃度は比率であるため、測定値は無次元で、単位はありません。ただし、塩分濃度は一般的に、「実用塩分単位」または「psu(practical salinity unit)」として知られる単位、または従来の「千分率」または「ppt(parts per thousand)」単位で報告されます。

適切に校正されている場合、導電率プローブとメーターを使用して、海水や汽水域水中の塩分濃度を測定できます。塩水や灌漑用水などの塩分を含む溶液は、TDSモードを使用することでより良好に測定できます。Orion導電率メーターは、一般に認められている規則に従って15℃に補正された海洋方程式を使用して、自動的に塩分濃度を計算します。温度センサーが内蔵されたOrion導電率プローブと、Orion Star AポータブルメーターやOrion Versa Star Proベンチメーターなどの導電率メーターを使用する場合、塩分濃度は、ユーザーの好みに応じて、実用塩分単位(psu)または千分率(ppt)として報告されます。

導電率、抵抗率、TDS、塩分濃度を正確に測定するためのヒント

導電率を正確に測定

導電率測定は、一般的に単純で簡単に行えるものですが、ミスによって生成されるデータの妥当性に影響を与える可能性があります。もっとも一般的な測定ミスを理解して回避することで、正確で再現性のある測定値へと導くのに役立ちます。

  1. 適切な導電率センサーを使用する。サンプルの組成、場所(現場での耐久性の必要性など)、水サンプルの純度はすべて、選択する導電率センサーのタイプに影響を与える可能性があります。適切な導電率プローブを選択する›

  2. 温度の影響を理解し予測する。導電率測定は、サンプルの温度に強く影響されます。

  3. 温度補正(TC)機能を正確に使用する。温度補正(TC)は、選択した基準温度で導電率を計算して表示します。TCがオフの場合、表示される値はその温度における実際の導電率です。

  4. 温度補正設定を慎重に設定する。温度補正(TC)を適用するかどうか、または選択した温度補正(TC)のタイプによって、測定値の精度に影響が出る場合があります。

  5. 温度平衡に達した後にのみ、導電率測定値を取得する。導電率は温度に依存しているため、導電率センサーがサンプルと同じ温度に平衡化するまでの時間を確保する必要があります。

  6. 複雑な多点校正の使用を最小限に抑える。ASTMによれば、導電率を正確に測定するには、代表的な導電率でのセル定数の1点校正で十分です。サンプルが幅広い導電率レベルをカバーしている場合は、1点または複数点を作成できます。

  7. 低レベルの導電率サンプルを扱う際は、十分な注意と配慮を払う。サンプルの安定性と純度、およびサンプルの取り扱い方法は、サンプル読み取り値の精度に影響を与える可能性があります。低レベルのサンプルは、汚染、CO2吸収、および脱気によって簡単に影響を受けます。

  8. 校正標準液を低く設定しすぎない。低レベルの標準液は汚染されやすく、効果的に使用するのが困難です。100 µS/cm以上で校正することにより、より厳密な精度を実現できます。

  9. 導電率センサーの保管およびメンテナンスのガイドラインに従う。導電率センサーの長期および短期保管方法が正しく行われていない場合、表面が変化し、その性能に悪影響を及ぼす可能性があります。

  10. 抵抗率、総溶解固形物(TDS)、塩分濃度係数の計算方法を理解する。導電率測定値を使用する際には、メーターのセットアップを通じて関連する機能を適用することで、サンプル中のこれらのパラメーターの推定値を決定できます。メーターは導電率と抵抗率の正確な測定値を提供しますが、実際のTDSと塩分濃度の値は重量測定法によって決定されるため、推定値となります。

導電率測定および試験製品およびソリューション

導電率ベンチおよびポータブルメーター

導電率測定の精度と信頼性は、使用する機器に左右されます。お客様が必要とする特性、性能、仕様、および予算に基づいて最適な製品を特定する方法をご確認ください。

オンライン導電率水測定システム

Thermo Scientificオンライン導電率水測定システムは、高品質の水と超純水を確保し、絶え間なくコストのかかる不純物の問題に対処します。

導電率テスター

  

Thermo Scientificポケットテスターは、手頃な価格で、外出先でも温度、導電率、TDS測定を行えます。

プローブ、標準液および溶液

   

お客様のサンプル測定のニーズを満たす、さまざまな導電率プローブをご用意しています。導電率測定ニーズに対応する導電率標準液、TDS標準液、および導電率プローブコンディショニング溶液です。


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