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架橋とは、化学的共有結合により複数分子を連結させるプロセスを指します。架橋法(タンパク質や生体分子に用いる場合には一般にバイオコンジュゲーションと呼ばれる)は、ウェスタンブロッティングやELISAにおける検出可能プローブの作製や、タンパク質の構造や相互作用を調査する戦略など、様々なプロテオミクス法において不可欠な要素です。
架橋試薬(または架橋剤)は、タンパク質上や分子上の特異的官能基(第一級アミン、スルフヒドリルなど)へ化学的付着できる複数の反応性末端を含む分子から成っています。本ページでは、化学的性質や様々な有効架橋剤について解説いたします。
20種類のアミノ酸の組成とシーケンスといったタンパク質構造は複雑であるにもかかわらず、実用的バイオコンジュゲーション法で使用可能な標的を含むタンパク質官能基はごくわずかです。つまり、以下4種類のタンパク質化学的標的で、架橋法および化学修飾法の大半が占められています:
This 45-page guide is of value to the novice as well as those who have previous experience with crosslinking reagents. It begins with a basic discussion on crosslinking and the reagents that are used. The guide also contains a discussion on various applications where crosslinking has been applied, including the powerful label transfer technique for identifying or confirming protein interactions. Crosslinking chemistry is addressed in an easy-to-follow format designed to convey the important information you need without getting lost in details. Each Thermo Scientific Pierce crosslinking reagent is shown along with its structure, molecular weight, spacer arm length and chemical reactivity. The handbook concludes with a list of excellent references on crosslinker use and a glossary of common crosslinking terms.
様々な反応性基が特徴づけられ、主要タイプのタンパク質官能基の標的化に利用されてきました。2種類の架橋試薬の組み合わせが、1分子中に組み込まれる反応性基よりも多い場合、多種多様な架橋試薬を合成させることができます。異なるサイズや化学的「骨格」(各反応性末端間の距離を定義するため、スペーサーアームと呼ばれる)タイプを組み合わせれば、架橋化合物タイプは膨大な数に上ります。
タンパク質結合用の一般的な架橋剤反応基反応性クラスのタイトルをクリックすると、本ページ上の各項リンク先へ移動します。イタリック体表記の化学基名については、本ページで解説をしておりません。
反応クラス | 化学基 |
---|---|
カルボキシル-アミン反応性基 | カルボジイミド(例:EDC) |
アミン反応性基 | NHSエステル イミドエステル ペンタフルオロフェニルエステル ヒドロキシメチルホスフィン |
スルフヒドリル反応性基 | マレイミド ハロ酢酸(ブロモ酢酸またはヨード酢酸) ピリジルジスルフィド チオスルフォン ビニルスルホン |
アルデヒド反応性基 酸化糖(カルボニル) | ヒドラジド アルコキシアミン |
光反応性基 非選択的なランダム挿入 | ジアジリン アリールアジド |
ヒドロキシル(非水系)- 反応性基 | イソシアネート |
Bioconjugate Techniques, 3rd Edition (2013) by Greg T. Hermanson is a major update to a book that is widely recognized as the definitive reference guide in the field of bioconjugation.
Bioconjugate Techniques is a complete textbook and protocols-manual for life scientists wishing to learn and master biomolecular crosslinking, labeling and immobilization techniques that form the basis of many laboratory applications. The book is also an exhaustive and robust reference for researchers looking to develop novel conjugation strategies for entirely new applications. It also contains an extensive introduction to the field of bioconjugation, which covers all the major applications of the technology used in diverse scientific disciplines, as well as tips for designing the optimal bioconjugate for any purpose.
化学的反応性(特定官能基への特異性)や各種アプリケーションでの作用に影響を及ぼす化学的性質に基づいて、架橋剤を選択します:
架橋剤は、ホモ二機能性またはヘテロ二機能性に分類できます。
ホモ二機能性架橋剤は、スペーサーアーム両端に同一の反応性基を有しており、一般に官能基などを含有する分子をランダムに「固定化」または重合させるワンステップ反応手順で使用するべきです。例えば細胞溶解物へアミン-アミン架橋剤を添加すると、タンパク質サブユニットがランダムに結合して、タンパク質とポリペプチド(溶液中で各リジン側鎖が偶発的に互いに接近したポリペプチド)が相互作用します。これは、全てのタンパク質相互作用の「スナップショット」の捕捉に非常に適していますが、他タイプの架橋アプリケーションに求められる精度は満たしていません。例えば抗体-酵素複合体を調製する場合、(ひとつまたは複数の)抗体間結合を形成させずに、抗体の各分子へ酵素分子を結合させることを目標にします。ホモ二機能性架橋剤でこれを達成することはできません。
ホモ二機能性架橋剤の例。シンプルな標準的架橋剤であるDSSは、短いスペーサーアームの両端に共通のアミン反応性NHSエステル基を有しています。スペーサーアーム長(11.4Å)は、結合分子(標的アミンの窒素)間の最終最大値の分子距離です。
ヘテロ二機能性架橋剤が各末端に有する反応基はそれぞれ異なります。これらの試薬の効力よって、それぞれの標的官能基を有する分子を単一工程で結合させられるだけでなく、望ましくない重合や自己共役を最小限に抑える配列結合(2工程)も可能になります。配列結合手順では、最初に架橋剤の極度の不安定基を用いて、ヘテロ二機能性試薬を一つのタンパク質と反応させます。未反応架橋剤の過剰分を除去した後、架橋剤の第二反応性基を介した反応の発生する第二タンパク質を含有する溶液へ、修飾された第一タンパク質を添加します。一端にアミン反応性スクシンイミジルエステル(NHSエステル)を有し、もう一端にスルフヒドリル反応性基(例:マレイミドなど)を有するタイプのヘテロ二機能性架橋剤が一般的に利用されています。NHSエステル基は、水溶液中で安定性が低いため、通常は最初にタンパク質に反応させます。第二タンパク質が有効な天然スルフヒドリル基を有していない場合、スルフヒドリル付加試薬を用いる前の工程で、それらを別途添加できます。
様々なアプリケーションにおいて、タンパク質複合体の天然構造を維持することが不可欠であるため、一般に架橋は近生理的条件下で実行されます。反応における架橋剤とタンパク質の最適モル比は実験に基づいて決定すべきですが、通例各試薬の製品説明書には、一般的アプリケーションのガイドラインおよび推奨書が添付されています。
アプリケーションに応じて、結合程度は重要な要素です。例えば免疫原結合体を調製する場合、抗原の免疫原性を高めるには結合程度が高いことが推奨されます。しかし抗体または酵素に結合する場合は、タンパク質の生物学的活性を維持するため、低〜中程度の結合が最適です。
また、タンパク質表面上の官能基の個数も考慮しなければなりません。ターゲット基が多数存在している場合、比較的低い架橋剤:タンパク質比を適用できます。ターゲットの潜在数が限られている場合には、比較的高い架橋剤:タンパク質比が必要に求められるでしょう。また、複数成分からなる複合体は分析が困難であり、タンパク質サブユニットの空間的配置に関する情報がほとんど得られないことから、成分の種類は少数または最低限に留めておくべきです。
EDCおよびカルボジイミドは、ゼロレングス架橋剤です;これによりカルボキシレート(-COOH)は、標的分子間の最終架橋(アミド結合)の一部とならずに、第一級アミン(-NH2)へ直接結合します。
EDC架橋反応は、外来性のカルボニルおよびアミンを含有しない条件下で実行しなければなりません。最も有効性が高いのは、酸性(pH 5.5~4.5)MESバッファ(4-モルホリノ - エタンスルホン酸)ですが、リン酸バッファ(pH ≤ 7.2)も反応化学に適合します。通例EDC結合プロトコルにはNヒドロキシスクシンイミド(NHS)またはその水溶性類似体(スルホ-NHS)が含まれている、効率性が向上し、より安定性の高いアミン反応性中間体が作製できます(次項をご参照ください)。
ペプチドおよびタンパク質には多数のカルボニルやアミンが含まれるため、直接EDCを媒介した架橋を行うと、通常はポリペプチドのランダム重合が発生します。それでも、固定化手順(例:カルボキシル化表面へタンパク質を付着させる)や、免疫原調製(例:大きなキャリアタンパク質へ小ペプチドを付着させる)において、この反応化学が一般的に利用されています。
NHSエステルは、カルボキシル分子のEDC活性化により形成された反応性基です(前項をご参照ください)。NHSエステル活性架橋剤および標識化合物は、弱アルカリ性条件下(pH 7.2~8.5)で第一級アミンと反応して、安定したアミド結合を生成します。反応によってN-ヒドロキシスク(MW 115)が遊離されます(ヒドロキシスクは透析や脱塩により容易に除去できます)。
一般にNHSエステル架橋反応は、室温または4℃下で0.5〜4時間、リン酸緩衝液(pH 7.2~8.0)中で実行します。トリス(TBS)などの第一級アミンバッファは、反応に競合するため、適合しません;しかし手順タイプによっては、結合手順の最後にトリスやグリシンバッファを添加して、反応をクエンチ(停止)させることができます。
スルホNHSエステルは、Nヒドロキシスク環上にスルホン酸(-SO 3)基を含む点を除いて、NHSエステルと同一です。この荷電基は反応化学へは一切影響を及ぼしませんが、荷電基を含有する架橋剤の水溶性が上昇する傾向があります。また荷電基の効果により、スルホ-NHS架橋剤の細胞膜透過が抑止されるため、この架橋剤を細胞表面架橋法に使用できます。
イミドエステル架橋剤は、第一級アミンと反応して、アミド結合を形成します。第一級アミンに対する特異性を確実にするには、ホウ酸緩衝液などのアミン非含有のアルカリ条件下(pH 10)でイミドエステル反応を実行するのが推奨されます。
得られるアミジン結合がプロトン化されるため、架橋は生理的pHで正荷電を有します。これは置換された第一級アミンに極めて類似しています。そのため、タンパク質構造や膜中の分子会合の研究や、天然タンパク質の等電点(pI)を維持したまま固相支持体上にタンパク質を固定化させる用途に、イミドエステル架橋剤が利用されてきました。イミドエステルは現在でも特定手順に利用されていますが、形成されるアミジン結合は高pH環境下で可逆的です。そのため大半のアプリケーションにおいて、安定性と効率性の極めて高いNHSエステル架橋剤が着実に台頭してきました。
マレイミド活性架橋剤および標識試薬は、中性付近の条件下(pH 6.5〜7.5)でスルフヒドリル基(-SH)と特異的反応して、安定したチオエーテル結合を形成します。タンパク質構造中のジスルフィド結合(例:システイン間結合)は、マレイミド試薬と反応させるには、 遊離チオール(スルフヒドリル)に還元させる必要があります。外来性チオール(たいていの還元剤)は、結合部位と競合するため、マレイミド反応バッファから除去する必要があります。
短いホモ二官能性マレイミド架橋剤の作用により、タンパク質構造中のジスルフィド架橋がシステイン間の永続性・非還納性の結合へと変換されます。主にマレイミド化学は、ヘテロ架橋剤形態のアミン反応性NHSエステル化学と組み合わせて利用されています。これにより精製ペプチドや精製タンパク質は、制御された2工程で結合させることが可能になります。
ハロ架橋剤の大半は、ヨード基またはブロモアセチル基を含有しています。ハロアセタールは、生理学的条件からアルカリ条件下(pH 7.2~9)でスルフヒドリル基と反応して、安定したチオエーテル結合を生成します。チロシン、ヒスチジンおよびトリプトファン残基と反応し得る遊離ヨウ素の生成を抑えるため、暗所でヨードアセチル反応を行います。
ピリジルジスルフィドは、広範なpH領域でスルフヒドリル基と反応して、ジスルフィド結合を形成します。このようにして架橋剤で調製した複合体は、ジチオスレイトール(DTT)などの標準的ジスルフィド還元剤で切断できます。
反応中に、標的分子の-SH基と架橋剤の2-ピリジルジチオ基間においてジスルフィド交換が起こります。ピリジン-2-チオン(MW 111; 最大λ 343 nm)が副生成物として放出されます。これらは、分光光度法でモニターでき、透析または脱塩によってタンパク質複合体から除去できます。
ナトリウムメタ過ヨウ素酸を用いた特定の砂糖グリコールを穏やかに酸化することにより、カルボニル(アルデヒドおよびケトン)をタンパク質や多糖類含有分子中から産出できます。そしてヒドラジド活性架橋剤と標識化合物はpH 5~7でこれらのカルボニルへ結合して、ヒドラゾン結合を形成します。
ヒドラジド化学は、グリコシル化部位を介した糖タンパク質の標識化、固定化または結合に有用です。通常グリコシル化部位は、(大半のポリクローナル抗体と同様に)機能性を保持させたい主要結合部位から離れたドメインに配置します。
現在ヒドラジド試薬ほど一般的に普及していませんが、アルコキシアミン化合物は、ヒドラジドとほぼ同様の方法でカルボニル(アルデヒドおよびケトン)へ結合します。
化学的に不活性化合物である光反応性試薬は、紫外線または可視光線に曝されると反応性を示します。架橋試薬や標識試薬で用いられる光反応性化学基として、従来までは主にアリールアジド(別称:フェニルアミド)が利用されてきました。
アリールアジド化合物は紫外光に曝されると、ニトレン基を形成します。このニトレン基は、C-H部位とN-H部位の二重結合により、もしくはそれらへ挿入されると付加反応が惹起し得ます。また環拡大を起こして、求核試薬(例:第一級アミン)と反応する可能性があります。様々なアミン非含有バッファ条件下で反応を実行することにより、一般的な官能基「ハンドル」を欠いたタンパク質や分子をも結合させることができます。
一般に光反応性試薬は、結合パートナー相互作用を捕捉するヘテロ二機能性架橋剤として使用されます。アミン(またはスルフヒドリル)反応性末端を用いて、精製ベイトタンパク質を架橋剤で標識します。そしてこの標識タンパク質を溶解液サンプルへ添加して、相互作用物質を結合させます。最後に、紫外光による光活性化でフェニルアミド基を介した結合を惹起します。
新たなクラスの光活性化学基であるジアジリンは、架橋試薬や標識試薬に取り入れられつつあります。ジアジリン(オキソペンタノエート)部分はフェニルアミド基より優れた光安定性を有しており、長波長紫外光(330~370 nm)で比較的容易かつ効率的に活性化されます。
ジアジリンを光活性化させると、反応性カルベン中間体が作成されます。特定試薬のスペーサーアーム長に相当する距離において、全てのアミノ酸側鎖やペプチド骨格との付加反応を介して、こうした中間体は共有結合を形成できます。翻訳によってアミノ酸の類似体ジアジリンをタンパク質構造へ組み込むことができ、これにより特定の組換えタンパク質を架橋剤として活性化できます。
化学選択的ライゲーションとは、相互特異的な結合試薬ペアの使用を指します。シュタウディンガーライゲーション試薬は、代謝化合物(アジド基を有する)または化学標識化合物(ホスフィン基を有する)が組み合わされています。つまりこれらの反応性基は相互認識しますが、標準的サンプル中の天然性または内因性の生体分子については認識しません。したがって、標的分子の各ペアがこれら2個の基で標識されると、結合時には高特異的に相互結合します。一般にこうした特殊な架橋法は、 in vivo代謝標識で利用されています。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.