Figure 3. The lac operon. When the endogenous level of lactose is low, the lac repressor (expressed by lacI) is able to bind to the lacO sequence and inhibit transcription of the lac genes (lacZ, lacY, and lacA) from the lac promoter (lacP). If lactose (more precisely, a metabolite called allolactose) or its analog IPTG is present, these bind to the lac repressor and change its conformation. This prevents the lac repressor binding to lacO, thereby derepressing expression of the operon.
Figure 4. Protein expression from lacUV5 promoter (with basal regulation by LysS) vs. araBAD promoter. (A) The araBAD promoter offers lower basal (uninduced) and higher induced levels of T7 RNA polymerase–mediated protein expression than does the lacUV5 promoter with pLysS. (B) Expression of a toxic protein, elastin-like peptide-TEV protease fusion (ELP-TEV), was enhanced using the araBAD promoter.
制限酵素の中には、メチル化感受性であることが知られているものもあります。これらはメチル化 DNA 配列を開裂することができません。dam および dcm 遺伝子は、E. coli に見られるもっとも一般的な二つのメチラーゼである DNA adenine methylase(アデニンメチラーゼ)および DNA cytosine methylase(シトシンメチラーゼ)をそれぞれコードしています。DNA をメチル化させないでおくため一般的に行われる方法は、一つは形質転換に dam と dcm を欠失させたコンピテントセルを使用することです。dam メチラーゼは 5′ GATC 3′ 配列のアデニンを修飾しますが [13]、dcm メチラーゼは 5′ CC(A/T)GG 3′ 配列の 2 番目のシトシンをメチル化します [14]。したがって、dam および dcm シーケンスを含む制限領域のある DNA は、dam–/ dcm–株で増殖させる必要があります。dam–/dcm–株は開裂を制御するためのユニークな戦略ですが、通常の形質転換に使用してはいけません。これは、増殖させた DNA に望ましくない変異が導入される可能性があるためです。
メチル化された DNA と、mcrA、 mcrBC、および mrr遺伝子
真核生物のゲノム DNA をクローニングするには、形質転換にメチル化依存性制限システム(methylation-dependent restriction systems:MDRS)を持つコンピテントセル株を選択する必要があります。動物、植物、および下等真核生物に由来するゲノム DNA は、多くの細胞プロセスでエピジェネティックな遺伝子発現制御に関わるメチル化シトシンを持っています[15、16]。こうしたメチル化シトシンを含む DNA 配列は、E. coli の McrA、 McrBC、Mrr 制限システムの一部であるメチル化依存性エンドヌクレアーゼの標的となります(表 2)。
表 2.MDRS システムおよび主要要素。
システム
定義
遺伝子
認識配列
標的
参考文献
McrA
Modified cytosine restriction(修飾されたシトシンの切断)
mcrA
5′-Cm5CGG-3′
5-ヒドロキシメチルシトシンまたは 5-メチルシトシン
17、18
McrBC
Modified cytosine restriction(修飾されたシトシンの切断)
mcrB、 mcrC (隣接)
5′-(G/A)C-3′ 約 55 ~ 103 bp 間隔
5-ヒドロキシメチルシトシン、N4-メチルシトシンまたは 5-メチルシトシン
19、20
Mrr
Methyladenine recognition and restriction(メチルアデニンの認識と制限)
mrr
コンセンサス配列が不明。修飾されたアデニンまたはシトシンが必要。
N6-メチルアデニンと 5-メチルシトシン両方を持つ DNA
21、22
したがって、mcrA、mcrBC、および mrrに変異がある E. coli 株は、メチル化シトシンやメチル化アデニンを持つ真核生物由来の DNA の増殖に不可欠です。また、真核生物由来のゲノムライブラリを構築する際の良好な表現にもなります。
DNA コンストラクトの中には DNA の組換えが生じやすいものがあるため、こうしたコンストラクトは形質転換後の細菌の細胞内で不安定です。このようなプラスミドコンストラクトの例としては、長い末端反復配列(long terminal repeats:LTRs)、逆方向反復配列、タンデムリピート配列を含むレトロウイルスやレンチウイルスベクターがあります。
recA1 や recA13 に変異があるコンピテントセルは、レトロウイルスやレンチウイルスベクターをバックボーンに持つ形質転換コンストラクトを安定的に増殖させるため広く使用されています。宿主 recA 遺伝子に変異があると DNA 修復に関わる酵素が不活性化されるため、組換えが減少し不安定なコンストラクトが保持されることになります。また、recA の変異は宿主染色体とベクター配列間の相同組換えも妨げます。しかし、recA 欠損のみでは反復配列を持つ DNA の欠失や組換えを十分に防ぐことができないため、DNA 反復配列の安定性を目的として特別に作製されたコンピテントセルを検討する必要があります(図 6)[23-26]。
Figure 6. Stability of a plasmid with direct repeat sequences. (A) Three strains of chemically competent cells were transformed with pH30, a 7.3 kb plasmid that contains ~100 repeats of a 32-bp sequence. Plasmid DNA recovered from randomly selected colonies of the three strains was analyzed for stability by agarose gel electrophoresis. (B) pH30, electroporated into Invitrogen Stbl4 cells and isolated from 5 separate transformations, was analyzed for stability by agarose gel electrophoresis.
> 30 kb の DNA コンストラクト(コスミドなど)の場合は、こうしたサイズを取り扱うために特別に試験されたコンピテントセルを選択してください。
大型 DNA コンストラクトの維持を改善すると報告されている deoR 変異を持つコンピテントセルを検討してください [30、31]。
Figure 7. Transformation efficiencies with large plasmids up to 200 kb. (A) Chemically competent (C) or electrocompetent (E) cells of different transformation efficiencies were transformed with plasmids ranging from 8 kb to 28 kb, and efficiencies of DNA uptake were measured (n = 4). (B) Large plasmids of 60 kb, 100 kb, and 200 kb were transformed into two strains of electrocompetent cells with high transformation efficiencies, and efficiencies of DNA uptake were measured (n = 4). (C) Large plasmids of 60–200 kb were transformed into three strains of electrocompetent cells at with transformation efficiency of 1 x 1010 CFU/μg for determination of DNA uptake (n = 6).
Figure 8. The Univector cloning system. The loxP sites on the donor and acceptor plasmids recombine in the presence of Cre recombinase to produce a recombinant plasmid.
Figure 9. M13 phage life cycle. (1) The M13 phage infects the bacterial cell via attachment to the F pilus, and injects its circular ssDNA genome. (2) The host’s cellular machinery uses the ssDNA (the + strand) as a template to synthesize a complementary strand, resulting in a dsDNA circle called the replicative form, or RF, which then multiplies. (3) The (+) strand of RF is nicked and extended using the (–) strand as a template, in a process called rolling cycle replication. (4) After one round of extension, the (+) strand is nicked again and recircularized to form the ssDNA genome of the progeny phage. (5) The progeny genome is packaged into a phage particle after a series of processes and is released from the host.
Figure 12. Single-stranded DNA purified from strainscontainingthe F´ episome. Clones carrying cDNA inserts of 0.3, 0.6, 0.9, 1.5, 2 kb, and no insert were analyzed on an agarose gel. Strain 1, which expresses wild type endA, shows the least dsDNA contamination.
昆虫細胞中でのタンパク質の発現には、哺乳類の細胞とよく似た翻訳後修飾、スケールアップの容易さなどの利点があります。昆虫細胞に組換え遺伝子を導入する方法の 1 つは、昆虫細胞に感染するバキュロウイルスを利用する方法です [49]。バキュロウイルスを作製する方法には、目的遺伝子を有する E. coli と昆虫細胞のシャトルプラスミドであるバクミドを使い、昆虫細胞にトランスフェクションする方法があります [50]。組換え体バクミドは、ヘルパートランスポゾンプラスミドと 親バクミドを持つコンピテントセルを、目的遺伝子を運ぶよう特別に設計されたドナープラスミドで形質転換することで E. coli 内に構築されます(図 13)。
Figure 13. Creation of a recombinant bacmid. In this system, the transforming donor plasmid carries the gene of interest and the site-specific transposon Tn7, which recognizes the lacZ-mini-attTn7 fusion sequence on the bacmid of the competent cell. Transposition from the plasmid to the bacmid occurs in the presence of the transposition proteins (transABCD) provided by a helper plasmid. Successful transposition disrupts the lacZ gene on the bacmid, resulting in white bacterial colonies.
組換え体 DNA は通常、Agrobacterium を介在させるプロセスにより容易かつ簡便に植物細胞へと導入されます [51]。この方法では、植物細胞へ遺伝子を導入するために改変された腫瘍誘導プラスミドまたは Ti プラスミドにクローニングされた植物 DNA を使用し、Agrobacterium tumefaciens 細胞を形質転換します [52]。
vir ヘルパープラスミドとしても知られる安全化した Ti プラスミドは、DNA 転移のための必須成分のみを有しています [53]。T-DNA は植物細胞へ転移される領域ですが、野生型 Ti プラスミドのほとんどの T-DNA は比較的大きく(約 25 kb)、クローニングに有用な制限領域を持っていません。また、遺伝子の転移に必須ではないことが知られています(図 14A)。T-DNA 領域は除去され、操作しやすい安全化したTiプラスミドを作製するため必須配列(vir、ori、LB、RBなど)のみが保持されます(図14 B)。一般的に使用される Ti プラスミドは pAL4404 です。
目的の配列は、A. tumefaciens と E. coli の両方で複製する pBI121 のようなバイナリベクターにクローニングすることができます [54]。バイナリベクターには、クローニング領域や選択マーカーとともに、ボーダー配列の LB と RB を持つサイズを小さくした T-DNA が含まれています(図 14C)。目的遺伝子はバイナリベクターの LB と RB の間にクローニングし、E. coli 内で増殖させることができます。また、最終的な遺伝子転移のために A. tumefaciens を安全化した Ti プラスミドによって形質転換します。
A. tumefaciens のエレクトロポレーションを利用することで、E. coli の混入リスクを最小限に抑えながら、より少ない手順、時間で形質転換高率を高めることができます [55]。
Figure 14. Ti plasmid and the binary vector system.
さまざまな種類、サイズの遺伝子をカバーする代表的な DNA ライブラリを構築するには、形質転換効率と宿主のジェノタイプが特に重要になります。ライブラリの調製では、ベクターにライゲーションした飽和量の DNA インサート(gDNA または cDNA 断片)プールを使用し、コンピテントセルを形質転換します。飽和量の DNA を使うことで、最小限の回数の形質転換反応から、代表的な DNA を持った最大サイズのライブラリを得ることができますが、細胞による DNA の取り込み効率は低下します。したがって、ライブラリ構築のためにコンピテントセルを選択する場合、1 回の形質転換で最大数の形質転換体を得るには、利用可能な最高の形質転換効率のもの、かつエレクトロコンピテントなものを使用することをお勧めします。
Trinh T, Jessee J, Bloom FR et al.(1994) Stbl2: An Escherichia coli strain for the stable propagation of retroviral clones and direct repeat sequences.Focus 16(3):78–80.