低密度ポリエチレン（LDPE）ラボウェア

ポリエチレンを重合させると、基本的に直鎖の高分子量炭化水素が形成されます。  ポリエチレンは分子構造中の分岐（側鎖形成）の相対的程度により分類されますが、その分岐の程度は選択性触媒により制御することができます。LDPE は HDPE よりも分岐が多いため、より密度の低い 3 次元構造になります。  このため、LDPE は可塑剤を添加しなくても性質上柔軟性が高く、比較的低温（85 °C）で融解します。

他のポリオレフィンと同様に、LDPE は化学的に不活性です。  強酸化剤は最終的には酸化を引き起こし脆化の原因となります。  LDPE は室温では非溶出性です。  腐食性溶媒により軟化または膨張が生じますが、これらの影響は通常可逆的です。LDPE は紫外線の長期曝露により損傷する可能性があります。   

低密度ポリエチレンは、柔軟性、衝撃強度および長期間の化学的適合性を必須条件とする Nalgene シリーズのボトル、ボトル、カーボーイおよびその他の製品の製造に使用されます。Nalgene LDPE 樹脂の微量金属含有量が極めて低いため、Nalgene LDPE ボトルは微量金属分析ラボでの使用に定評があります。 

下表には、20 °C における一般的な使用曝露評定が記載されています。化学的侵襲および損傷に対するプラスチック材質の耐性は、温度、化学物質への曝露時間および遠心分離などのさまざまなストレスにも影響されます。  Nalgene 製品のさらに詳しい化学耐性評定に関しては、本ページの最後に記載されているリソースを参照してください。

*酸化性酸以外：酸化性酸に関しては、「酸化剤、強酸化剤」を参照してください。

可塑剤神話
プラスチックを曲げやすくまたは柔軟にするために、すべてのラボ用プラスチックにはフタル酸系可塑剤が含まれているものと思われがちです。Nalgene LDPE 製品は可塑剤を全く添加しなくても元来柔軟であるため、Nalgene LDPE ラボウェアからフタル酸系可塑剤が浸出する心配はありません。

材質の識別
LDPE はオートクレーブできません；オートクレーブ内で完全に融解してしまいます。LDPE カーボーイをポリプロピレン製のカーボーイと間違えてオートクレーブに使用しないよう注意してください。LDPE カーボーイが完全に破損し、オートクレーブにも損傷が生じる可能性があります。Nalgene ボトルまたはカーボーイの材質は、容器の底部で確認することができます。  底部に材質コード（ 「LDPE」）が成形されています。オートクレーブ前に、ボトルまたはカーボーイの底部に成形されている材質コードをいつもチェックしオートクレーブの可否をご確認することを推奨します。

プラスチックの経時劣化
LDPE ラボウェアは時間経過と共に劣化します。ラボウェアが恒久的に変色（黄色、茶色、桃色など）したり、亀裂またはクモの巣状の「ひび割れ」が発生し始めたら、ラボウェアを交換すべき時期が来ていると考えてください。Nalgene LDPE ボトルを握った際に、硬さと同時にしなやかさを感じられないといけません。亀裂の生じる音が聞こえる、あるいは亀裂が発生していると思われる場合には直ちにボトルの使用を中止し、新しいものと取り換えてください。使用している LDPE ラボウェアの経時劣化を遅延させ製品寿命を延長させるために、紫外線（天井の室内灯を含む）に直接曝露されないキャビネット内に保管し、適合性のある化学薬品のみを使用し、Nalgene L900 などの中性 pH の洗剤で洗浄してください。

再生利用可能性
LDPE 製品はほとんどの自治体において再生利用可能です（再生利用コード 4）。  多くのの Nalgene LDPE 製品は再使用可能であり、一般的なラボ条件下で適切に使用すれば長持ちさせることができ、製品寿命に達した時にリサイクルに出すことが可能です。リサイクルに出す際は、十分洗浄し、安全に取り扱いできるようにしてください。 

脚注：
[1].加熱たわみ温度は、66 psig（ASTM D648）の圧力下に置いた時に、射出成形バーが 0.1” たわむ温度です。  ノンストレスアプリケーションでは材質を加熱たわみ温度以上で使用することも可能です。使用最高温度を参照してください。
[2].使用最高温度°C：この温度は、継続的使用最高温度、延化／脆化温度およびガラス転移温度に関係し、強度の損失がわずか、または全く発生しない状態で数分間から2時間、ポリマーを曝露することが可能な最高温度を表します。
[3].脆化温度とは、その樹脂の製品が落下した際に壊れる、または亀裂が生じる温度です。十分に注意して使用／取り扱いするかぎり、脆化温度は最低使用可能温度ではありません。
[4].滅菌：オートクレーブ（121 °C、15 psig で 20 分間）--オートクレーブ前に、製品を洗浄して蒸留水ですすぎます。（オートクレーブ前には常にねじを完全に緩めてください。）室温では樹脂に対して特に影響のない化学薬品であっても、オートクレーブ時の温度では劣化の原因となる場合があるため、事前に蒸留水によってこのような化学薬品の付着がないよう洗浄してください。
     気体 EtO --エチレンオキシド：100％ EtO、EtO：窒素混合物、EtO：HCFC混合物
     乾熱—ポリマーパーツにストレスまたは負荷がかからない状態で 160 °C に 120 分間曝露
     消毒剤—塩化ベンザルコニウム、ホルマリン/ホルムアルデヒド、過酸化水素、エタノール、など
     照射—ガンマ線またはベータ線による 25 kGy（2.5 MRad）での非安定化プラスチックの照射。
[6].「可」は、WI38 ヒト二倍体肺細胞株に対し MEM 溶出法を使用する、USP および ASTM 生体適合性標準試験に基づいて、細胞無毒性であると同定された樹脂を示します。
[7].樹脂は、FDA、連邦食品・医薬品法の食品添加物改正法の CFR21 セクションの要件を満たしています。使用者は、特定のアプリケーションにおいて使用される特定の容器に関して適合性検証を行う責任を負います。
[8].許容条件：
   - 非酸性の水性製品；塩または砂糖あるいは両方を含む可能性（pH は 5.0 以上）
   - 乳製品およびその加工品；高脂肪または低脂肪の水中油型エマルジョン
   - 表面に遊離脂肪または油を含まない含水ベーカリー製品
   - 表面に遊離脂肪または油を含まない乾燥固体 （終了試験必要無） および高温滅菌（例えば、100 °C／212 °F 以上）の条件 A を除く FDA Regulation 177.1520 の表 2 に記載されているすべての条件下
[12]。空のラボウェアの、600 ワットでの 5 分間の照射に基づく評定。注意：使用最高温度を超えた使用はしないでください。また加熱によりプラスチックを侵襲したり、急速に吸収される化学薬品にラボウェアを曝露しないようにしてください。

お客様のアプリケーションに最適な製品の選択に関しては、Nalgene Technical Support Representative チーム（+15855868800 または米国トールフリー番号 18006254327）までお電話いただく、または電子メール で technicalsupport@thermofisher.com までお問い合わせください。

オーストラリア、フランス、ドイツ、アイルランド、スイスおよび英国からは、テクニカルサポート（+80012349696（トールフリー）または +496184906321）までお電話いただく、または電子メールで techsupport.labproducts.eu@thermofisher.com までお問い合わせください。

規制サポート：  製品の規制文書または材質表示に関しては、Nalgene Regulatory Support 宛に RocRegSupport@thermofisher.com までご連絡ください