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多くの人はフッ素化エチレンプロピレン(FEP)が「テフロン」であると考えているようですが、テフロンフッ素樹脂は Chemours Company FC, LLC により独占的に製造されており、テフロンという商標は Chemours 社とのライセンス契約下においてのみ使用することができます。テフロンの商標には、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)およびその他の材質を含む一連の Chemour のフッ化炭素ポリマーが関連しています。
他のメーカーも類似したフッ化炭素ポリマーを製造していますが、それらを「テフロン」ポリマーと呼ぶことはできません。 それは、たとえばすべてのティッシュペーパーを「クリネックス」と呼ぶことと同じです。当社では、正真正銘のテフロンブランドのFEPポリマーおよび PFA ポリマーを含む Nalgene ラボウェアに関してはテフロン商標使用のライセンス契約を締結していますが、当社ウェブサイト(thermofisher.com)およびほとんどの文献ではこれらのフッ素樹脂材質には一般名を使用し、商標規制に反しないようにしています。
他のすべてのフッ化炭素と同様に、FEP はプラスチック界のスーパーヒーローの一つであり、優れた化学薬品耐性および幅広い温度範囲における高い性能を示します。
FEP は半透明で柔軟性があり、密度が高いため重く感じられます。摩擦係数が非常に低いため、触感が滑らかです。FEP は不活性で結合能が低く、溶出物は非常に少なく金属含有量は微量です。FEP は、高温の溶融アルカリ金属、フッ素元素およびフッ素プリカーサー以外の既知のすべての化学薬品に耐性を示します。濃縮過塩素酸には使用できません。FEP は最高 +190 °C までの温度で使用可能であり、最低 -270 °C の温度まで弾性特性が維持されます。
FEP は既知の化学的および熱的方法により繰り返し滅菌することが可能です。硝酸中で煮沸することも可能です。他のスーパーヒーローと同様に、FEP にも弱点があり、滅菌レベル用量のガンマ線に曝露されると材質が損傷します。
FEP の優れた化学的および物理的特性には高い製造コストが伴い、その結果 FEP 製品は高価格な製品となっています。FEP 樹脂そのものが高価であると同時に、樹脂の成形に高い処理温度が必要であり、他の製品に比べて製品廃棄率が高く、また FEP が成形温度において腐食性を有するために成形機器の寿命が縮まり、型や他の機器を高価な特殊金属で作成しなければならないといったさまざまな要因により FEP 製品は高価格なものとなっています。
FEP は、不活性であることおよび溶出物が少ないことが重視される重要なアプリケーションに使用される、液漏れ防止 Nalgene ボトル、ビーカーおよびメスシリンダーなどです。FEP は、腐食性化学薬品または極端な温度にラボウェアが暴露される場合に、割れにくいプラスチックの方がガラスよりも有利であるという理由からも使用されます。
温度 | 物性 | 透過性 | 滅菌[4] | 規制 |
HDT[1]:70 ℃ 最高使用温度[2]:190 ℃ 脆弱性[12]: –270 ℃ | 紫外線:耐性良好 極めて優れた柔軟性 半透明 マイクロ波[13]:ほぼ可 比重:2.15 | cc.-mil/ 100in2-24hr.-atm cc.-mm/ m2-24 hr.-Bar | オートクレーブ:可 EtO:可 乾式加熱:可 照射:不可 消毒剤:可 | 細胞無毒性[6]:可 食品および飲料使用適合性[7]:可 21 CFR:177.1550 |
下表には、20 °C における一般的な使用曝露評定が記載されています。化学的侵襲および損傷に対するプラスチック素材の耐性は、温度、化学物質への曝露時間および遠心分離などのさまざまなストレスにも影響されます。Nalgene 製品および材質のさらに詳しい化学薬品耐性評定に関しては、本ページの最後に記載されているリソースを参照してください。
クラス | 一般評定 |
酸(希酸または弱酸) | E |
酸*(強酸、濃酸) | E |
アルコール(脂肪族) | E |
アルデヒド | E |
塩基/アルカリ | E |
エステル | E |
炭化水素(脂肪族) | E |
炭化水素(芳香族) | E |
炭化水素(ハロゲン化物) | E |
ケトン(芳香族) | E |
酸化剤(強) | E |
*酸化性酸以外;酸化性酸に関しては、 「酸化剤、強酸化剤」を参照してください。
E | 30 日間の継続的な曝露において損傷を認められません。プラスチックは長年にわたる使用に耐性を示す場合もあります。 |
G | 試薬への 30 日間の継続的な曝露においてほとんどまたは、まったく損傷を認められません。 |
F | 試薬への 7 日間の継続的な曝露後にある程度の影響が生じます。プラスチックにより、ひび割れ、亀裂、強度低下または変色を生じる可能性があります。 |
N | 継続的な使用は推奨されません。深いひび割れ、亀裂、強度低下、変色、変形、溶解または透過性損失を含む瞬間的な損傷が生じる可能性があります。 |
FEP 製ラボウェアを使用する利点の一つは、化学的適合性をほとんど気にする必要がないことです。壊れにくいラボウェアであるという安心感を持ちながら、化学的適合性をあまり気にせず使用できます。しかし、FEP 製ラボウェアを最大限に活用するためには注意するべき点がいくつかあります。
プラスチック材質の識別
FEP であると考えて使用しているラボウェアが実際にフッ素樹脂であることを確認してください。Nalgene FEP ボトルは底面に「FEP」と成形されています。他にも、FEP 製ラボウェアはサイズに比して重く感じられ、半透明で、やや乳白色または濁った外観をしており、表面は滑らか(つつるつるしている)です。
使用法、取り扱い注意および洗浄
FEP 製ラボウェアは直火 またはホットプレート上で直接加熱しないでください。ホットプレート上の熱点により FEP が損傷する可能性があります。また、FEP は熱伝導率が低く、FEP 容器の内容物は効率的に加熱されません。
FEP 製ラボウェアは研磨剤に曝露されると傷がつきます。ブラシではなく、柔らかいスポンジタイプの洗浄器具のみを使用してください。FEP 製ラボウェアに食器洗浄機を使用する場合には、すべての硬質金属製のスピンドルを柔軟性のあるチューブで覆い、ラボウェアを傷つけないようにします。
オートクレーブ
FEP 製ラボウェアとボトル類はオートクレーブ可能です。空の容器の推奨オートクレーブサイクルは、121 °C において 15 psi で 20 分間です。オートクレーブの際は、冷却段階中も含め、容器のフタを十分に緩め、通気を良くし、空気循環が阻害されないように注意してください。容器の通気が正しく行われないと、容器の崩壊または内破(融解と間違われる場合もあります)が生じる可能性があります。
キャップ付きのボトルをオートクレーブする場合には、キャップを完全に緩めるか、容器の開口部にキャップを締めずにやや斜めに設置し、キャップが締まることがないようにします。容器が完全に冷却されたら、キャップを正しいく設置して無菌的に締めることができます。
遠心分離
FEP は非常に柔軟性の高い材質であるため、Nalgene FEP 遠沈管および遠心ボトルを遠心分離に使用する場合には、全容量の 100%まで充填することが必要です。それにより、遠沈管または遠心ボトルの肩部分が回転の遠心力によって押しつぶされるのを防ぐことができます。また、FEP 製の遠沈管は高速遠心分離を行う際に、冷却遠心分離器にのみを使用してください。遠心ボトルは低速遠心分離にのみ使用することが推奨され、使用温度範囲は –100 °C ~ +150 °C です。最高遠心分離速度および高速での液漏れ防止のためのシーリングキャップに関しては、各遠心ボトルの製品説明書を参照してください。
脚注:
[1].加熱たわみ温度は 66 psig(ASTM D648)の圧力下に置いた時に射出成形バーが 0.1” たわむ温度です。ノンストレスアプリケーションでは材質を加熱たわみ温度以上で使用することも可能です;使用最高温度を参照してください。
[2].最高使用温度°C:この温度は、継続的使用最高温度、延化/脆化温度およびガラス転移温度に関係し、強度の損失がほとんどまたは、まったく発生しない状態で数分間から 2 時間、ポリマーを曝露することが可能な最高温度を表します。
[3].プラスチックがかなりの量の熱を吸収および保持するため、表面が予想外に熱くなる場合があります。
[4].滅菌:オートクレーブ(121 °C、15 psig で 20 分間)—オートクレーブ前に製品を洗浄して蒸留水ですすぎます。(オートクレーブ前に常にキャップを十分に緩めてください。)室温ではプラスチックに対して特に影響のない化学薬品であっても、オートクレーブ時の温度で劣化の原因となる場合があるため、事前に蒸留水によってこのような化学薬品の付着がないように洗浄してください。
気体 EtO —エチレンオキシド:100% EtO、EtO:窒素混合物、EtO:HCFC 混合物
乾熱—ポリマー部分にストレスまたは負荷がかからない状態で 160 °C に 120 分間曝露
消毒剤—塩化ベンザルコニウム、ホルマリン/ホルムアルデヒド、過酸化水素、エタノール、など
照射—ガンマ線またはベータ線による 25 kGy(2.5 MRad)での非安定化プラスチックの照射
[6]。「可」は、WI38 ヒト二倍体肺細胞株に MEM 溶出法を使用するUSPおよび ASTM 生体適合性試験スタンダードに基づいて、細胞無毒性であると同定された樹脂を示します。
[7].樹脂は、FDA、連邦食品・医薬品法の食品添加物改正法のセクション CFR21 の要件を満たしています。使用者は特定のアプリケーションにおいて使用される特定の容器に関して適合性検証を行う責任を負います。
[12].脆化温度とは、その樹脂製の製品が落下した際に壊れる、または亀裂が生じる温度です。十分に注意して使用/取り扱いするかぎり、脆化温度は最低使用可能温度ではありません。
[13].空のラボウェアを 600 ワットで 5 分間照射する条件における評定。注意:使用最高温度を超える温度では使用しないでください。また、加熱によりプラスチックを損傷させるまたはプラスチックに急激に吸収される化学薬品にラボウェアを曝露させないでください。
当社のサポートチーム(+1-585-586-8800 または米国トールフリー番号 1-800-625-4327)までお電話いただくか、または電子メールで technicalsupport@thermofisher.com までお問い合わせください。
オーストラリア、フランス、ドイツ、アイルランド、スイスおよび英国からは、テクニカルサポート(+800-1234-9696(トールフリー)または +49-6184-90-6321)までお電話いただくか、または電子メールで techsupport.labproducts.eu@thermofisher.com までお問い合わせください。
規制サポート:製品の規制文書または材質表示に関しては、Nalgene 規制サポート 宛に RocRegSupport@thermofisher.com までご連絡ください。
化合物、温度および曝露時間による化学的適合性評定に関しては、 Nalgene General Labware Chemical Compatibility Guide を参照ください。
遠心分離容器の化学適合性評定に関しては、Centrifuge Ware Chemical Resistance 表 のみを使用してください。