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クロスリンキング質量分析は「位置が固定されている」タンパク質‐タンパク質相互作用を分析します。その結果、タンパク質がシグナル伝達カスケードや遺伝子発現制御、エネルギー(ATP)産生などの生物学的プロセスにどのような影響を与えているかをより深く理解するのに役立ちます。
タンパク質機能の大部分は他のタンパク質、および核酸や脂肪酸などの細胞内成分との相互作用によって決定づけられます。そのような相互作用により生物学的プロセスの開始、終了、変化が起こります。それゆえ、クロスリンキング質量分析を利用したタンパク質相互作用の研究は、健常状態および疾患状態の双方を理解するうえで有用です。
クロスリンキング質量分析は、タンパク質‐タンパク質相互作用の研究における強力なツールとして台頭してきています。クロスリンキングの過程で、相互作用する複合体の成分を化学的に結合させる目的で化学的クロスリンカーを使用します。クロスリンクされたタンパク質は、液体クロマトグラフィー(LC)で分離され質量分析(MS)により同定されます。このワークフローではもとの相互作用複合体を維持したままにタンパク質‐タンパク質相互作用を解析することができます。
逆相液体クロマトグラフィー(RP-LC)は非常に幅広くさまざまなペプチドに対応可能なので、クロスリンキング分析によく使われます。Thermo Scientific EASY-nLC 1200 システムや UltiMate 3000 RSLCnano システムのような低速フローシステムを利用する RP 分離はクロスリンキングワークフローに理想的です。EASY-nLC 1200 は操作が簡便で高い性能を誇り、UltiMate 3000 RSLCnano は汎用性と比類のない精密性が特長です。
Thermo Scientific Orbitrap Fusion Lumos トライブリッド質量分析計はクロスリンキング質量分析に理想的なプラットフォームです。Orbitrap Fusion Lumos で多様な解離技術(CID、HCD、ETD、EThcD)が利用可能です。異なる解離法を、異なる MSnステージで利用可能であることから、クロスリンクしたペプチドとタンパク質‐タンパク質相互作用のサイトを明確に同定できます。
Thermo Scientific Proteome Discoverer ソフトウェアはクロスリンキングデータの解析において有効な手段を提供します。ソフトウェアの新しい XlinkX ノード は、クロスリンキング質量分析に必要な機能が完全統合されたクロスリンクペプチドの検索エンジンとして利用できます。このノードを用いると、分子間および分子内でクロスリンクしたペプチドとモノアダクト体を区別して、クロスリンクしたペプチドのアノテーションとが可能です。MS 非切断型および MS 切断型のクロスリンカーの双方のデータの解析が可能です。