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制御性T細胞(Treg)は、自己寛容と免疫細胞の恒常性の維持に重要です。これは、IPEX(immune dysregulation polyendocrinopathy enteropathy X-linked syndrome)のように、Treg集団の喪失または機能不全による深刻な影響により明らかにされます。Tregは、1型糖尿病、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、および重症筋無力症など自己免疫疾患の原因となる免疫応答の制御に重要な役割を果たすことも分かっています。
Tregの分類と名称は標準化されており、3つの主要なTreg集団があります。(1)以前はnatural Tregと呼ばれていた胸腺由来Treg(tTreg)は、CD25+ Foxp3–またはCD25– Foxp3lowとして特徴づけられる2つのCD4シングルポジティブ前駆細胞サブセットとは区別されます。(2)末梢由来Treg(pTreg)は、腸関連リンパ組織などの末梢リンパ組織のナイーブT細胞が抗原刺激を受けることで誘導されます。(3)In vitroにおいてTreg(iTreg)は、IL-2およびTGFβの存在下でナイーブCD4+ T細胞を抗CD3で刺激することで誘導できます。これらの3つのサブセットを識別する単一のマーカーはありませんが、Foxp3の発現はそれらの抑制機能に必須です。
Tregの同定と特性評価は、エフェクターT細胞の表現型と転写の特性を担う能力により複雑になっています。たとえば、腸内の免疫応答を制御しなければならないTregは、Foxp3とCD25に加え、RORγtとCD196(CCR6)を発現する一方で、内臓脂肪組織のTregはFoxp3とPPARγを発現します。このような可塑性はIL-6、IL-1、TNFα、IL-23などのサイトカインにより引き起こされ、Tregが組織特異的な化学誘引物質に応答し、活性部位に遊走し、対応する免疫応答を制御することができます。Tregの表現型と遺伝子シグネチャーについて私たちが知っていることの多くは、マウスモデルでの研究から得られたものです。ヒトにおけるTregの研究は、Foxp3およびTregの他の表面マーカーの発現が、T細胞受容体(TCR)の刺激によって従来型T細胞で一過性に低レベルで誘導されるという事実により、さらに複雑になっています。エピジェネティック修飾の研究では、Foxp3遺伝子座のTreg特異的な脱メチル化領域(TSDR)に位置するCpGアイランドがtTregおよびpTregで脱メチル化されていますが、iTregおよびFoxp3の発現が低いかまったくない従来型T細胞ではメチル化されていることが認められました。したがって、TSDRの脱メチル化は、tTreg & pTregを識別するための真の方法と考えられます。特異的な生きたTregの分取が可能になる表面マーカーの探索は続きます。
特性 | 胸腺由来のTreg(tTreg) | 末梢由来のTreg(pTreg) | In vitroで生成されたTreg(iTreg) |
---|---|---|---|
発生 | 胸腺 | 末梢(主に腸) | In vitro |
前駆細胞 | CD4シングルポジティブ細胞 CD25+Foxp3–またはCD25–Foxp3 low | ナイーブCD4+細胞 | ナイーブCD4+細胞 |
細胞表面の表現型 | CD4+CD25 hi CD127 low CD62L hi CD44 low CD45RB low (マウス)CD4+CD25 hi CD127 lowまたは CD4+CD25 hi CD45RO hi(ヒト) | CD4+CD25+CD62L low CD44 hi | CD4+CD25+CTLA-4+CD62L low |
TSDRメチル化状態 | 脱メチル化 | 脱メチル化 | メチル化 |
転写因子 | Foxp3 c-Rel EOS Helios STAT5 | Foxp3 GATA-3(サブセット) Helios(サブセット) IRF4(サブセット) PPARγ(サブセット) RORγt(サブセット) STAT5 T-bet(サブセット) | Foxp3 Helios(サブセット) STAT5 |
その他の関連する表面マーカー | CD31(サブセット) CD45RA(サブセット) CD49d CD101 CD103 CD121a(活性化) CD121b(活性化) CD134(OX-40) CD137(4-1BB) CD152(CTLA-4) CD197(CCR7) CD304(NRP1) CD357(GITR) FR4 GARP(活性化) LAP(活性化) TIGIT | CD45RA(サブセット) CD49b CD194(CCR4;サブセット) CD196(CCR6;サブセット) CD183(CXCR3;サブセット) CD223(LAG3) CD226 CD278(ICOS) CD279(PD-1) GARP(活性化) LAP(活性化) | CD152(CTLA-4) GARP(活性化) LAP(活性化) |
Ex vivoでの増殖 | 抗CD3およびIL-2 | N/A | N/A |
In vitroでの分化 | N/A | N/A | 抗CD3、抗CD28、IL-2、およびTGFβ |
Low:低い発現レベル、Hi:高い発現レベル、+:発現マーカーは細胞サブタイプにみられる、-:発現マーカーは細胞サブタイプにみられない。 |
報告によれば、Tregが利用している免疫抑制機序にはさまざまなものがあります。細胞接触依存性抑制は、TIGIT、CD39、CD73、およびCD152(CTLA-4)によるものと、グランザイムAとBを介した標的細胞の細胞溶解によるものがあります。Tregは活性化時にIL-2を分泌しないのに対して、IL-10、TGFβ、およびIL-35などの免疫調節性サイトカインを分泌します。微小環境からのIL-2の枯渇およびその他の代謝の乱れは、免疫応答を抑制するためにTregが用いる機序として報告されています。
いくつかの治療薬は、自己免疫疾患や移植片対宿主疾患(GVHD)におけるTreg機能を増強させるため、または一部のがんにおけるTreg機能を遮断するために、Tregを標的としています。たとえば、抗TNF抗体は、関節リウマチ患者のTreg集団を増殖させ、その機能を安定させることが示されました。一方、低用量のIL-2は、Foxp3+細胞上でのCD25の発現を増加させ、Treg集団を増殖させるとともに、移植片対宿主疾患、C型肝炎ウイルス誘発性血管炎、1型糖尿病、円形脱毛症、およびSLEに有望な効果をもたらしました。さらなる研究では、自己免疫疾患のTregを標的とするために、抗CD3抗体、抗CD25抗体、IL-2/抗IL-2複合体、抗IL-6受容体抗体、およびCTLA-4:Igを使用することが検討されています。治療に使用するためにex vivoでTregを増殖および安定化させる方法が検討されています。
当初、Tregは免疫応答を抑制する能力を持つCD4+ CD25+ T細胞集団として同定されました。磁気細胞分離アプローチでは、Treg上のCD25の高発現を利用して、ヒトとマウスの両方からFoxp3+細胞を濃縮します。Foxp3をTregのマスター制御因子として特定することは、Tregを他とは異なるT細胞系統として定義する上で重要なステップでした。しかし、CD25とFoxp3の発現は、抑制機能を欠くT細胞においても誘導される場合があります。さらに、Foxp3は核に局在するため、生きた状態でTregを分離するためのマーカーとして使用できません。
Tregの表面上にある追加の抗原マーカーを特定することにより、生きた状態でTregの特定とフローサイトメトリーに基づく分取が可能となり、より高度に濃縮された抑制性のTreg集団が得られるようになりました。CD4とCD25に加えて、マウスとヒトのTregは、高レベルのCD357(GITR/AITR)とCD152(CTLA-4)を発現しますが、CD127(IL-7Ra)の発現は低レベルです。ヒトでは、CD45RO、CD39、およびCD73などのマーカーを追加することにより、Tregの濃縮を改善できます。事実、いくつかの研究では、CD4、CD25、およびCD127のみを使用してヒトのTregを分離すると、活性化された従来型T細胞を大幅に濃縮できることが示されています。CD45RAは、ヒトにおける休止状態のTregとエフェクターTregを区別するための有用なマーカーでもあることが証明されています。同様に、マウスモデルでは、CD39、CD45RB、CD101、FR4、CD73をCD4、CD25、CD127のパネルに追加すると、Tregの濃縮を増強させることができます。
Tregは、さまざまな状態(休止または活性化)および特定の組織(腸、脂肪、皮膚、または筋肉)に存在することが可能で、追加のホーミングおよび遊走マーカーの発現に基づいてさらに識別できます。さまざまな表面マーカーに対する抗体のパネルを使用した生きたTregの同定と分離により、Treg亜集団の濃縮と、それらの抑制活性の下流分析、ならびにex vivoでの増殖やマウスまたはヒトへの移植による免疫反応の制御が可能になります。
Tregは免疫応答の強力な抑制因子です。しかし、それらはさほど豊富な細胞の集団ではありません。このため、in vivoとin vitroの両方でそれらの機能を研究するのに十分な数の細胞を得ることを目的として、既存のTregの増殖や従来型CD4+ T細胞からのTregの分化などex vivoで操作するためのいくつかのアプローチが必要です。
磁気細胞分離またはマルチパラメーターフローサイトメトリーアプローチのいずれかによって生きたままTregをヒトまたはマウスから分離した後、TCRの刺激およびラパマイシンの存在下あるいは非存在下でIL-2を添加することで、in vitroでの増殖が可能です。TCRの刺激は、プレートに結合した抗CD3抗体、ビーズに結合した抗CD3/抗CD28抗体、または抗CD3抗体で被覆された抗原提示細胞を使用すれば実現できます。共刺激は、ヒトTregの増殖には日常的に用いられますが、マウスTregのin vitroでの増殖には不要な場合があります。磁気分離アプローチを用いる場合、ラパマイシンの添加が有効です。従来型T細胞の増殖を抑制し、Tregが優先的に増殖して生き残ることができることが知られています。
マウスでは、IL-2とTGFβの存在下で抗CD3抗体を使用してTCRを介して刺激すると、ナイーブCD4+ Foxp3– T細胞からin vitroでTregが生成される場合があります。抗CD28抗体によるFoxp3の発現促進効果は主に内因性IL-2産生の促進によるため、抗CD28抗体による共刺激は不要な場合があります。興味深いことに、ヒト由来のナイーブCD4+ T細胞は、同様の培養条件下でFoxp3を発現するように誘導できますが、これらの細胞は抑制機能を持たず、再刺激に応答して増殖し、炎症性サイトカインを産生します。一部の研究では、ラパマイシンまたはレチノイン酸の添加により、ヒト細胞の抑制機能の促進に役立つ可能性が示唆されていますが、他の研究室では再現されていません。
Tregの抑制機能は、TregとエフェクターT細胞の共培養系を用いてin vitroで研究することができます。Tregの供給源は、新たに分離するか、ex vivoで増殖させるか、iTregにする場合があります。通常、TregとエフェクターT細胞は、TCRを刺激しながら、最大4日間さまざまな比率で培養されます。CFSE(カルボキシフルオレセインサクシンイミジルエステル)の希釈、BrdU(5-ブロモ-2'-デオキシウリジン)または3H-チミジンの取り込みによるエフェクターT細胞の増殖を測定するのが一般的です。サイトカイン産生、活性化マーカーのアップレギュレーション、および細胞数も評価する場合があります。興味深いことに、エフェクターT細胞上のCD25およびCD134(OX-40)の発現を用いる2日間のプロトコルは、増殖と相関し、Tregの抑制機能をより短時間で代替的に測定できることが示されています。
メディエーター | 機能 |
---|---|
抗CD3 | TCR架橋 |
抗CD28 | 共刺激 |
Gibco CTS( Cell Therapy Systems ) Dynabeads CD3/CD28 | TCR架橋と共刺激 |
IL-2 | 増殖因子 |
ラパマイシン | 従来型T細胞の増殖を抑制する |
メディエーター | 機能 |
---|---|
抗CD3 | TCR架橋 |
抗CD28 | 共刺激 |
Gibco CTS( Cell Therapy Systems ) Dynabeads CD3/CD28 | TCR架橋と共刺激 |
IL-2 | 増殖因子 |
CFSE | 細胞分裂 |
CellTrace色素 | 細胞分裂 |
抗CD25 | 活性化マーカー |
抗CD134 | 活性化マーカー |
BrduまたはEdU | DNA合成/増幅 |
3Hチミジン | DNA合成/増幅 |
Treg細胞は、接触依存的なメカニズムやサイトカインを介したメカニズムなどさまざまな方法を通じて、T細胞の機能を制限することが示されています。これらには、エフェクターT細胞の機能を強力に制御することが示されているTGF-b、状況依存的にT細胞抑制性サイトカインとして機能できるIL-10、一部の研究でT細胞増殖を阻害する効果があることが示されているIL-35の分泌などがあります。さらに、研究により、ケモカインCCL3とCCL4は、Tregに近接させることにより、細胞傷害性T細胞の抑制に影響を与え得る化学誘引物質としての役割を果たせることが示されています。また、Treg細胞は、刺激されたナイーブT細胞と比べ、高親和性IL-2受容体を表面に発現し、IL-2を競合するため、T細胞の増殖と機能に間接的に影響を及ぼしていることが実験で示されています。
分化 | 分泌 | |
---|---|---|
サイトカインとケモカイン | IL-2、TGF-b | IL-10、TGF-b、IL-35、IL-9、CCL3、CCL4 |
Tregは、CTLA-4、PD-1、Tim-3、LAG-3、およびTIGITなどいくつかの免疫チェックポイント分子も発現します。これらの分子は、抗原提示細胞上で発現される同族のリガンドと結合すると、正または負の免疫調節シグナルを伝達します。これらの免疫チェックポイント分子のいくつかは、膜結合型のプロテアーゼにより切断され形成されたり、可溶性形態として発現しており、可溶性の形態で発見されています。これらの可溶性の形態は、抗腫瘍活性を活性化または阻害できる機能的活性を有する可能性があり、マルチプレックスイムノアッセイを用いて血清中または血漿中で測定できます。
種 | 概要 | アナライト | カタログ番号 |
---|---|---|---|
ヒト | Th1/Th2/Th9/Th17 Cytokine 18-Plex Human ProcartaPlex Panel | GM-CSF、IFNガンマ、IL-1ベータ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17A(CTLA-8)、IL-18、IL-22、IL-23、IL-27、TNFα | EPX180-12165-901 |
Immuno-Oncology Checkpoint 14-Plex Human ProcartaPlex Panel 1 | D27、CD28、CD137(4-1BB)、GITR、HVEM、BTLA、CD80、CD152(CTLA4)、IDO、LAG-3、PD-1、PD-L1、PD-L2、TIM-3 | EPX14A-15803-901 | |
Immuno-Oncology Checkpoint 14-Plex Human ProcartaPlex Panel 2 | MICA、MICB、パーフォリン、ULBP-1、ULBP-3、ULBP-4、アルギナーゼ-1、CD73(NT5E)、CD96(Tactile)、E-カドヘリン、ネクチン-2、PVR、Siglec-7、Siglec-9 | EPX140-15815-901 | |
マウス | Th1/Th2/Th9/Th17/Th22/Treg Cytokine 17-Plex Mouse ProcartaPlex Panel | GM-CSF、IFNガンマ、IL-1ベータ、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-9、IL-10、IL-12p70、IL-13、IL-17A(CTLA-8)、IL-18、IL-22、IL-23、IL-27、TNFα | EPX170-26087-901 |
Immuno-Oncology Checkpoint 7-Plex Mouse ProcartaPlex Panel 2 | CD137L(4-1BBL)、CD152(CTLA4)、CD276(B7-H3)、CD80、PD-1、PD-L1、PD-L2 | EPX070-20835-901 | |
Immuno-Oncology Checkpoint 4-Plex Mouse ProcartaPlex Panel 1 | BTLA、CD27、LAG-3、TIM-3 | EPX040-20830-901 |
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