逆転写反応のトラブルシューティングガイド

逆転写反応はRNAから相補的DNA(cDNA)を生成します。cDNAはその後、RNA研究のための様々なダウンストリームアプリケーションにおいて、テンプレートとして役立ちます。そのため、実験結果の正当性を維持するために、cDNA合成における潜在的な課題を理解し防ぐことが重要となります。ここに、逆転写反応に関するトラブルシューティングのためのヒントを、最も一般的なアプリケーションについて、特に(定量的)逆転写PCR、すなわちRT-(q)PCRについて重点的に紹介します

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このページの内容:

考えられる原因推奨事項
RNAの完全性が不十分
  • cDNAの合成の前に、ゲル電気泳動やマイクロフルイディクスでRNAの完全性を確認してください。
  • 分解を防ぐため、できるだけRNAサンプルの凍結融解を繰り返し行わないでください。
  • ラボ内における最善の措置によってRNaseのコンタミネーションを避けてください
  • 逆転写反応にRNase阻害剤を添加してください。
  • RNaseによる汚染がないことを確実にするため、ヌクレアーゼフリー水か、あるいはDEPC(diethylpyrocarbonate)処理水を使用してください。
  • 金属イオン要求性のヌクレアーゼによる非特異的な分解を防ぐため、EDTAを含む緩衝液(0.1 mM EDTA、あるいは10 mM Tris + 1 mM EDTA)でRNAを保存してください。
  • ゲノムDNAの除去に際しては、DNaseの不活化や除去にともなうRNAの完全性への影響を抑えることのできる、ゲノムDNA除去プロトコールを選択してください。
  • 分解したRNAサンプルでも効率良く働く逆転写酵素の使用を検討してください。
RNAの純度が低い
  • 組織や血液、植物のような特殊なサンプルのために設計されたRNA精製プロトコールに従ってください。
  • UV分光法により色々な波長における吸光度を測定し、RNAの純度を確認してください。
  • RNAの抽出手順を再確認してください。サンプルを効率良く可溶化し、阻害物質の持ち越しを最小限に抑えるため、使用するサンプルの推奨量を越えないようにしてください。不純物や阻害物質を除くための洗浄ステップが、十分に行われているかどうかを確認してください。
  • 阻害物質の濃度を下げるため、必要であれば、使用するRNAをヌクレアーゼフリーの水で希釈してください。
  • 残存する塩類や阻害物質を除くため、必要であれば、RNAを再精製してください。
  • 生体試料由来の阻害物質や、塩類、抽出試薬などによる阻害に抵抗性のある逆転写酵素の使用を検討してください。
高いGC含量と(あるいは)二次構造
  • 逆転写反応の前に、RNAを65°Cで5分ほど加熱後、すぐに氷上で冷却し、二次構造を変性させてください。
  • 高温(50°Cなど)での逆転写反応によるヘアピン配列の形成を、できるだけ抑えてください。
  • 反応温度の上昇にも耐えうる高耐熱性の逆転写酵素を使用してください。
RNAの量が少ない
逆転写酵素が最適ではない
反応時間と反応温度が最適ではない
間違ったプライマーデザイン
  • 特異的なRNAテンプレートのための逆転写反応に推奨されるプライマーのタイプを再確認してください。例えば、細菌のRNAやポリ(A)テールのないRNAだけでなく、潜在的に分解しているRNAなどに対しては、オリゴ(dT)プライマーの代わりにランダムプライマーを使用してください。
  • 遺伝子特異的プライマーを使用する場合は、プライマーの配列がターゲットの3’末端に相補的であるかどうかを確認してください。
使用する試薬の品質(あるいは安定性)
  • 試薬類の使用や保存は、メーカーの指示に従ってください。
  • 使用する試薬類がフレッシュで、選択した逆転写酵素に適しているかどうかを確認してください。
  • 沈殿しやすいDTTや塩類を完全に溶解させるため、しっかりと試薬を混合してください。
考えられる原因推奨事項
ゲノムDNA(gDNA)のコンタミネーション
問題のあるプライマーデザイン
  • 遺伝子特異的プライマーを使用している場合、プライマーデザインにおける推奨事項を再確認してください。プライマーの結合サイトが目的の遺伝子に特異的であるかどうかを確認してください。
  • プライマー結合の特異性を上げるため、耐熱性の逆転写酵素を使用し、反応温度を上げて逆転写反応を行ってください。
  • (q)PCRのセットアップでは、cDNAの特異的な増幅を可能にするため、エクソン‐エクソン結合部においてPCRプライマーを設計してください。
考えられる原因推奨事項
RNAの完全性が不十分
  • cDNAの合成の前に、ゲル電気泳動やマイクロフルイディクスでRNAの完全性を確認してください。
  • 分解を防ぐため、できるだけRNAサンプルの凍結融解を繰り返し行わないでください。
  • ラボ内における最善の措置によってRNaseのコンタミネーションを避けてください
  • 逆転写反応にRNase阻害剤を添加してください。
  • RNaseによる汚染がないことを確実にするため、ヌクレアーゼフリー水か、あるいはDEPC(diethylpyrocarbonate)処理水を使用してください。
  • 金属イオン要求性のヌクレアーゼによる非特異的な分解を防ぐため、EDTAを含む緩衝液(0.1 mM EDTA、あるいは10 mM Tris + 1 mM EDTA)でRNAを保存してください。
  • ゲノムDNAの除去に際しては、DNaseの不活化や除去にともなうRNAの完全性への影響を抑えることのできる、ゲノムDNA除去プロトコールを選択してください。
  • 分解したRNAサンプルでも効率良く働く逆転写酵素の使用を検討してください。
逆転写反応を阻害する物質について
  • 組織や血液、植物のような特殊なサンプルのために設計されたRNA精製プロトコールに従ってください。
  • UV分光法により色々な波長における吸光度を測定し、RNAの純度を確認してください。
  • RNAの抽出手順を再確認してください。阻害物質の持ち越しを最小限に抑えるため、使用するサンプルの推奨量を越えないようにしてください。阻害物質を除くための洗浄工程が、きちんと行われているかどうかを確認してください。
  • 残存する塩類や阻害物質を除くため、必要であれば、RNAを再精製してください。
  • 阻害物質の濃度を下げるため、必要であれば、使用するRNAをヌクレアーゼフリーの水で希釈してください。
  • 生体試料由来の阻害物質や、塩類、抽出試薬などによる阻害に抵抗性のある逆転写酵素の使用を検討してください。
高いGC含量と(あるいは)二次構造
  • 逆転写反応の前に、RNAを65°Cで5分ほど加熱後、すぐに氷上で冷却し、二次構造を変性させてください。
  • 高温(50°Cなど)での逆転写反応によるヘアピン配列の形成を、できるだけ抑えてください。
  • 反応温度の上昇にも耐えうる高耐熱性の逆転写酵素を使用してください。
プライマーに問題がある
  • 遺伝子特異的プライマーを使用している場合、プライマーの結合サイトが目的の遺伝子に特有であるかどうかを確認してください。
  • 可能であれば、完全長cDNAの合成には、オリゴ(dT)プライマーを使用してください。
  • 潜在的に分解しているRNAを扱う時には、逆転写反応が最も効率良く進むランダムプライマーの使用を検討してください。
  • ランダムプライマーを使用する場合、長鎖のcDNA断片を高収量で得るために、プライマーの濃度を最適化してください。
逆転写酵素が最適ではない
  • 長鎖cDNAを合成できる逆転写酵素を選択してください。このタイプの逆転写酵素はしばしば、低いRNase H活性、増加した処理能力、そして阻害物質に対する強い耐性を示します。
考えられる原因推奨事項
RNAの濃縮が不十分
RNAの完全性が不十分
  • cDNAの合成の前に、ゲル電気泳動やマイクロフルイディクスでRNAの完全性を確認してください。
  • 分解を防ぐため、できるだけRNAサンプルの凍結融解を繰り返し行わないでください。
  • ラボ内における最善の措置によってRNaseのコンタミネーションを避けてください
  • 逆転写反応にRNase阻害剤を添加してください。
  • RNaseによる汚染がないことを確実にするため、ヌクレアーゼフリー水か、あるいはDEPC(diethylpyrocarbonate)処理水を使用してください。
  • 金属イオン要求性のヌクレアーゼによる非特異的な分解を防ぐため、EDTAを含む緩衝液(0.1 mM EDTA、あるいは10 mM Tris + 1 mM EDTA)でRNAを保存してください。
  • よりDNAの除去に際しては、DNaseの不活化や除去にともなうRNAの完全性への影響を抑えることのできる、ゲノムDNA除去プロトコールを選択してください。
  • 分解したRNAサンプルでも効率良く働く逆転写酵素の使用を検討してください。
RNAの純度が低い
  • 組織や血液、植物のような特殊なサンプルのために設計されたRNA精製プロトコールに従ってください。
  • UV分光法により色々な波長における吸光度を測定し、RNAの純度を確認してください。
  • RNAの抽出手順を再確認してください。サンプルを効率良く可溶化し、阻害物質の持ち越しを最小限に抑えるため、使用するサンプルの推奨量を越えないようにしてください。不純物や阻害物質を除くための洗浄ステップが、十分に行われているかどうかを確認してください。
  • 残存する塩類や阻害物質を除くため、必要であれば、RNAを再精製してください。
  • 生体試料由来の阻害物質や、塩類、抽出試薬などによる阻害に抵抗性のある逆転写酵素の使用を検討してください。
高いGC含量と(あるいは)二次構造
  • 逆転写反応の前に、RNAを65°Cで5分ほど加熱後、すぐに氷上で冷却し、二次構造を変性させてください。
  • 高温(50°Cなど)での逆転写反応によるヘアピン配列の形成を、できるだけ抑えてください。
  • 反応温度の上昇にも耐えうる高耐熱性の逆転写酵素を使用してください。
プライマーに問題がある
  • 反応プライマーミックスとその濃度(例えば、オリゴ(dT)とランダムヘキサマーなど)を最適化してください。
  • 潜在的に分解しているRNAに対しては、適切なカバー率を保証するために、ランダムプライマーを選択してください。
反応時間と反応温度が最適ではない
逆転写酵素が最適ではない
考えられる原因推奨事項
逆転写酵素が最適ではない
  • 使用した逆転写酵素のエラー率と校正効率をチェックしてください。またシーケンシング結果の信頼性を確かめるために、高品質なサンプルを準備すること、両末端のシーケンシングを行う事、そして複数のサンプルを用いるなどの手法がとられます。
ゲノムDNA(gDNA)のコンタミネーション

For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.