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エキソソームは直径30~100nmの細胞から分泌される細胞小胞体ですが、100nm以下の小胞体がすべてエキソソームとはかぎらないので、その点注意が必要です。ですからエキソソームを解析するためには、回収された小胞体がどのようなものであるかを把握する必要があります。
細胞から分泌される小胞体にはどのようなものがあるか簡単に確認します。
まずアポトーシスの際に分泌されるアポトーシス小体(apoptotic body)(1) がありますが、サイズはエキソソームと比較するとかなり大きく(>1μm)、サイズ分画によって排除できます。
注意が必要なのは、微小小胞体(microvesicles:MV)です。エキソソームと同様に正常細胞から放出される小胞体です。
現在、エキソソームとMVは、合成経路の違いで区別されています。図 1で示すように、多胞性エンドソーム(MVB: multivesicular body)を経由して分泌される細胞外小胞体がエキソソームと定義されており、細胞膜から直接出芽する小胞体をMVと定義され、これらは異なるものと区別されています。
図 1 エキソソームと微小小胞体(microvesicles:MV)の分泌
----は微小小胞体(microvesicles:MV)の分泌経路を示しています。MVは細胞膜から直接出芽します。
----はエキソソームの分泌経路の概略を示しています。エキソソームは後期エンドソーム(Multivesicular body: MVB)中に出芽することによって形成される小胞内小胞( intraluminal vesicles : ILVs)と呼ばれるさまざまなサイズからなる小胞体由来であると考えられています。これらの小胞体は、MVEsが細胞膜と融合することによって細胞外へ放出されます。
ただし、エキソソームとMVを確実に分画する方法が現段階ではありません。
図 2に示すように、これらの小胞体はサイズが異なるため、その浮遊密度やサイズの差を利用するエキソソーム回収法が開発されています(超遠心法や弊社のTotal Exosome Isolation 試薬を含む)
ただしMVには100nm程度の小さなサイズも報告されており(2)、これらの回収法ではMVを完全に排除することは困難です。さらにわずかながら非膜質粒子(タンパク質凝集体など)も混入してしまいます。こうしたきょう雑物がエキソソーム研究にどの程度影響を与えているのかは十分に検証はされていません。
サイズだけでなく、エキソソームとMVsの違いとして、含まれるタンパク質(カーゴタンパク質)の構成なども挙げられていますが、明確な区別を行うための十分な指標にはならないとの指摘もあります(3)。
より確実な研究を行うためにも、エキソソームの特性を解明し、明確な区別を行うための指標の確立が重要になります。
このパートでは、特定のタンパク質をターゲットとして、免疫吸着法による追加の分画法を紹介します(図3)。
免疫吸着法は小胞体表面膜に存在するタンパク質を標的として回収する方法で、サイズや浮遊密度のみに依存した従来の方法と一線を画する方法です。
エキソソーム形成時に取り込まれる原形質膜由来のタンパク質や小胞表面に存在するタンパク質をターゲットとすることで、特定の小胞体を選択できるため、よりエキソソームの特性にフォーカスした研究に適しています。
エキソソーム膜表面に存在するタンパク質についてはさまざまな報告がありますが、特にテトラスパニン類のCD9、CD63、CD81は、発現量が多く、エキソソームマーカー候補として既に利用されています。
サーモフィッシャーサイエンティフィックでは、エキソソームマーカー( CD9、CD63、CD81)に対する抗体をコンジュゲートした磁気ビーズ( Dynabeads® )を提供しており、Exosome isolation 試薬(from cell culture media)で回収したエキソソーム濃縮サンプルから、それぞれCD9、CD63、CD81ポジティブな小胞体を分画し、より詳細な研究をサポートしています。
またがん診断研究で注目されているEpCAM(epithelial cell adhesion molecule)* 陽性のエキソソーム回収用のDynabeads® や さまざまなタンパク質に応用可能なStreptavidin でコートしたエキソソーム回収用のDynabeads® も提供しています。
図 3に示すように、免疫吸着法でエキソソーム分画を行う場合、以後のアプリケーションによって回収方法が分かれます。特にフローサイトメトリー解析には特別な最適化が必要となります。エキソソームは非常に小さな粒子なのでフローサイトによる検出が難しく、ビーズ表面により効率的に多くのエキソソームを吸着させることがポイントです。
このパートでは、アプリケーション毎に最適化したサブタイプ回収として、下記2つの回収方法を紹介します。
I. Western / qRT-PCR / Sequencing解析用エキソソームサブタイプの回収
II. フローサイトメトリー解析用エキソソームサブタイプの回収
* : EpCAMは上皮細胞接着分子ですが、卵巣がんの研究でEpCAM陽性エキソソーム量とがん進行度の相関性(4) が報告されて以降、さまざまなエキソソームによる診断の標的タンパク質として研究されています。
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