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液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)が分析対象とするサンプルは、熱に不安定、高分子量、高極性、イオン性または不揮発性、もしくは誘導体化を要するものです。典型的な LC/MS のサンプルは、核酸、ペプチド、ステロイド、ホルモン、色素、脂肪酸、アルコールなどです。したがって、LC/MS は薬物動態、プロテオミクス、メタボロミクス、リピドミクス、医薬品開発に主に利用されています。
まず液体クロマトグラフィーでサンプル成分が分離され、その比較的精製された成分が質量分析計に導入されます。エレクトロスプレーイオン化法(ESI)あるいは大気圧化学イオン化法(APCI)は、サンプルから荷電イオンを生成するのによく利用されます。生成したイオンは質量分析計に導入されます。分析対象イオンの同定は、観測された質量電荷比(m/z)を MassBank、METLIN、mzCloud ライブラリなどのデータベースと照合することで行われます。
LC/MS の分析対象サンプルは GC/MS と重複しており、、以下の図に示すように、いくつかの分析対象物はLC/MS と GC/MSの両方で分析できます。
不揮発性または高分子量の化合物を含む LC/MS サンプルは、通常まず液体クロマトグラフィー(LC)分離を行い、質量分析(MS)に供します。このステップは、数千とはいかないまでも数百もの他の化合物や汚染物質の中から、最終的に目的物質を単離、同定するうえで不可欠です。
古くから用いられる重力流カラムとは対照的に、今日の LC カートリッジには微粒子担体が高密度で充填されているため、高圧(HPLC)または超高圧(UHPLC)をかけるだけで検体を分離できます。こうしたクロマトグラフィー技術の進化により、わずか数ダルトン差の分子の分離が可能となりました。そのうえで、クロマトグラフィー技術者は、より高速かつ混入物を含まない液体クロマトグラフィーを実現できるサンプル調製法の開発を迫られています。
サンプルを液体クロマトグラフィー用にどのように調整するか、あるいは、どのように消化するかを決めるうえで、その物理的および化学的特徴が極めて重要です。溶解しない塩類のような粒子を含むサンプルではろ過が採用され、多くのラボで疎水性または親水性 PTFE フィルターを用いて干渉物質や微粒子を除去しています。
物理的には、目的物質のサイズを考慮して、使用するカートリッジの細孔径および粒径を決定します。化学的には、目的物質の pH を踏まえてカラム充填剤の結合固定相のタイプ(たとえば、アルキル結合部分)を決定する必要があります。また、サンプルの pH 範囲に応じて使用できるカラムも異なります。
LC/MS のサンプル調製の全体を通して、移動相(分析対象物を含む)と固定相(充填剤または担体)の両方を考慮に入れる必要があります。可溶性および不溶性マトリクス化合物を検討し、それらがカラムからの目的物質の溶出を妨げる可能性も考慮する必要があります。
移動相の生成に用いる水、溶媒、バッファーはバックグラウンドノイズを生じるので、できる限り高純度のものを使用する必要があるということは、言うまでもありません。質量分析結果に高いレベルのバックグラウンドノイズが含まれる場合は、検出限界および定量限界が損なわれます。
固相抽出(SPE):この分離方法は、溶液(水など)中に溶解している化合物(農薬など)の分離に多く用いられます。カートリッジの充填剤には(クロマトグラフィー用の)オクタデシル(C-18)固定相が用いられ、溶液はこのシリカベース固定相のカラムを通ります。あるいは強酸性サンプルの場合は、ポリマーベースのカートリッジを使用します。
個々の化合物の溶出には時間を要し、1 本の SPE カラムから複数の化合物が溶出されてしまう可能性もあります。溶離液を濃縮乾固し、50:50 メタノール/水で溶解後、質量分析計に注入します。代わりに、SPE は、SOLAµ SPE プレートなどのハイスループットの 96-ウェルプレートで実行できます。
液液抽出(LLE):LLE では最初に目的物質を溶媒で分配した後、抽出、濃縮、再溶解します。LLE の一例であるフェノール/クロロホルム抽出は長年、タンパク質や核酸の分離に用いられてきました。テストステロンのような特徴的な分析対象物の場合、最初に有機溶媒であるメチル-tert-ブチルエーテルを添加した後に攪拌したサンプルを定量に用います。溶媒分配したサンプルは上清を取り除き、加熱ブロックに移します。エバポレーション後、その残渣を酢酸アンモニウムとギ酸を含有する 50:50 メタノール/水溶液に再溶解します。
固相担体による液液抽出(SLE): SLE では、水性サンプルを珪藻土から成る担体にロードします。サンプルを担体に吸着させ、メチル-tert-ブチルエーテルのような有機溶媒の溶出液で複数回洗浄します。検体を有機相に分配した後、乾燥して濃縮し、50:50 メタノール/水溶液に再溶解します。
タンパク質沈殿(PPE):タンパク質沈殿には、塩析、等電点沈殿、有機溶媒抽出、イオン交換などさまざまな方法があります。サンプルタイプ(細胞、組織、生体液)、対象タンパク質のロケーション、存在量およびサイズ、マトリクス効果などに応じて、使用するクロマトグラフィーを決めます。
塩析:硫酸アンモニウム沈殿とも呼ばれるこの沈殿法では、硫酸アンモニウム濃度を上げていってタンパク質を塩析します。このプロセスは、塩がタンパク質の結合水和水を奪った時点で生じます。
等電点沈殿:タンパク質の溶解性はタンパク質のイオン強度(pH)で決まります。溶媒などによってイオン強度が弱められてタンパク質の等電点が正味電荷ゼロに達すると、タンパク質は凝集します。
有機溶媒抽出:タンパク質は、水を代表とする誘電率の高い溶媒環境によく溶解します。一方でアセトンやメタノールなどの有機溶媒の誘電率は低く、タンパク質の凝集が促進します。
有機溶媒抽出は疎水性の高い化合物に適用されます。まず、タンパク質は水と有機溶媒中で異なる溶解性を示すため、沈殿します。沈殿、濃縮の後、バッファー溶液を添加して pH を最適化します。その後、エーテルやクロロホルムなどの溶媒を用いて目的物質を抽出します。
イオン交換クロマトグラフィー:この手法は、溶媒抽出が乳化により適用できない場合に用いられ、タンパク質を等電点の違いによって分離します。イオン交換カラムでは、ポリマー(たとえば、陰イオン交換樹脂の DEAE セルロース)と溶液を用いて pH 勾配を形成します。タンパク質はこの勾配中を移動し、その等電点に達するとその場に留まります。溶出バッファーの pH を変えたり塩濃度を上げたりして、結合したタンパク質を溶出します。
LC/MS で日常的に分析される特定の検体については、以下に示す特有の調製プロトコールがあります。
液体クロマトグラフィーカラムには、一般的に HPLC フォーマットと UHPLC フォーマットがあります。クロマトグラフィーカラムに関する詳細情報を当社のクロマトグラフィーラーニングセンターでご覧いただけます。
カラム自体は、担体マトリクス(多くはシリカ製)と結合固定相(シリカに結合した官能基)の 2 つの部分で構成されています。担体マトリクスの種類に応じて、さまざまな結合固定相との相互作用を介して、酸性化合物とアルカリ性化合物のいずれがカラムに保持されるかが決まります。下図にシラノール結合基の例を示します。
カラム担体マトリクスには以下の物質が用いられます。
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