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逆転写によって RNA 鋳型から DNA が合成されると、相補的 DNA(cDNA)が生じます。こうして得られた cDNA は、遺伝子発現などの RNA 研究向け各種ダウンストリームアプリケーションにおいて鋳型として役立ちます。したがって、cDNA 合成は、分子生物学プロトコルのファーストステップとみなされます。cDNA 合成を初めて行う場合や、プロトコルを最適化したいと考えている場合には、cDNA 合成効率が最大限となるように、以下の 主要な5ステップを適用してください。
RNA は cDNA 合成においてテンプレートの役目をします。トータル RNA は日常的に RT-(q)PCR などのダウンストリームアプリケーションのための cDNA 合成に使用されますが、一方で、特殊なタイプの RNA(例えば、メッセンジャー RNA(mRNA)や miRNA のようなスモール RNA など)は、cDNA ライブラリの構築や miRNA プロファイリングを行う際に、濃縮が必要となる場合があります。
RNA をインタクトに保つことが極めて重要であり、抽出、調製、保存、実験での使用においては、特別な注意が必要となります。RNA の分解を防ぐための最善策は、グローブを着用し、エアロゾルバリアチップでピペット操作を行い、ヌクレアーゼフリーの実験器具と試薬類を使用し、実験エリアを汚染除去することです。
RNA の分離精製には、材料の種類(例えば、血液、組織、細胞、植物など)や実験の目的に応じて、さまざまな方法が利用できます。分離精製プロセスにおける主な目的は、適切な保存と抽出方法に基づいた RNA 分子の安定化、RNase の阻害、および収量の最大化です。最適な精製法では、酵素活性に影響を及ぼす植物組織由来の複合多糖類やフミン酸、そして逆転写酵素の共通の阻害剤となる塩類や金属イオン、エタノール、フェノールのような内因性の化合物を除去します。一度精製した RNA は –80°C で保存し、できるだけ凍結融解を繰り返さないようにします。
微量のゲノム DNA(gDNA)が RNA と一緒に混ざって精製されることがあります。混入した gDNA は逆転写反応の妨げになり、偽陽性、高バックグラウンド、あるいは RT-qPCR における感度の低下につながる可能性があります。
一般的な方法として、gDNA を除去するために、DNase I を精製 RNA に添加処理します。加えた DNase I は、残留して一本鎖 DNA を分解してしまう可能性があるため、cDNA 合成の前に完全に除去しておく必要があります。ただし、DNase I の不活化処理では、RNA の分解や損失をもたらす可能性があります。
DNase I の代替品として、RNA や一本鎖 DNA に影響のない二本鎖特異的 DNase が、混入した gDNA の除去に利用できます。二本鎖特異的 DNase は熱に不安定な性質を持つため、悪影響のない比較的マイルドな温度(例えば 55°C など)で簡単に不活化できます。このような二本鎖特異的かつ熱不安定性の DNase は、逆転写反応に先立ち、精製 RNA と 37°C で 2 分間反応させるだけで良く、ワークフローとしても合理的です(図 1 )。
分子生物学において最も利用されているのは、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)やモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の pol 遺伝子に由来する逆転写酵素です。AMV 由来の逆転写酵素は、実験室で cDNA を合成するために分離された最初の酵素群の 1 つでした。AMV 由来の逆転写酵素は、RNA:cDNA ハイブリッド中の RNA 鎖を分解する強い RNase H 活性を持っているため、短鎖の cDNA フラグメント(< 5 kb)を生成します。
MMLV 由来の逆転写酵素は、モノマー構造であることから、よりシンプルなクローニングや、組み換え体への改変が可能であり、代替品として好まれるようになりました。本酵素は、AMV 由来の逆転写酵素に比べると熱安定性が低い一方で、RNase H 活性が低いため、より長鎖の cDNA(<7 kb)をさらに効率よく合成することができます。
cDNA 合成をさらに改善するために、より RNase H 活性が低く(RNase H ドメインの変異、もしくは RNaseH–)、熱安定性が高く(55°C まで)、そして処理能力を高めた(65 倍以上)MMLV 逆転写酵素の改変体が作られました。これらの性質は、cDNA の鎖長と収率の増加、感度の向上、阻害物質に対する耐性の改善、そして反応時間の短縮といった利点をもたらしました(表 1)。
AMV逆転写酵素 | MMLV逆転写酵素 | 改変型 MMLV 逆転写酵素 ( Invitrogen SuperScript IV 逆転写酵素など) | |
---|---|---|---|
RNase H活性 | 高 | 中 | 低 |
反応温度 (推奨最高値) | 42°C | 37°C | 55°C |
反応時間 | 60 分 | 60 分 | 10 分 |
ターゲットの鎖長 | ≤5 kb | ≤7 kb | ≤12 kb |
相対収率 (困難な条件あるいは最適でない RNA での比較) | 中 | 低 | 高 |
逆転写反応の構成成分には、酵素とプライマーに加えて、RNA テンプレート(ゲノム DNA 除去処理済みのもの)、バッファー、dNTP、DTT、RNase 阻害剤、および RNase フリーの水が含まれます(図 2)。
構成品 | 主な特長 |
---|---|
RNA テンプレート | RNA をインタクトに保つことが極めて重要であり、抽出、調製、保存、実験での使用においては、特別な注意が必要となります(ステップ 1 参照)。
|
反応バッファー |
|
dNTP |
|
DTT |
|
RNA の分解を抑えるために、通常、反応緩衝液に含まれているか、あるいは反応系に添加します。以下の場合:
既知の RNase が多数存在しますので、それらの作用モードと反応要件に基づいて適切な RNase 阻害剤を選択してください。 | |
以下を用い、RNase を除去します。
混入した RNase は簡単なろ過では除去できず、また熱に安定であることから、オートクレーブした水では十分ではありません。 |
逆転写反応は 三つのメインステップ、すなわち、プライマーのアニーリング、DNA の重合化、そして酵素の不活化を伴います。これらのステップの温度と時間は、プライマーの選択、ターゲットとなる RNA、そして使用する逆転写酵素によって変わります。
この重要ステップは、DNA の重合化にあります。このステップにおける反応温度と反応時間は、選択したプライマーと使用する逆転写酵素によって変わってきます。ランダムヘキサマーを使用する場合、プライマー伸長のために酵素を加えた後、室温(約 25°C)にて 10 分間、反応液をインキュベートすることをお勧めします。
逆転写酵素はそれぞれに耐熱性が異なり、最も高い最適反応温度が決まっています。耐熱性の逆転写酵素を使えば、より高い温度(50 °C など)での反応が可能であるため、酵素活性に悪影響なく、GC 含量の高い RNA や二次構造を持った RNA を変性させることができます(図 3)。そのような酵素による、高温でのインキュベーションは、cDNA の収量や鎖長を増加させ、遺伝子産物の反映を向上させます。
重合化の時間は逆転写酵素の処理能力に依存し、処理能力とは基質との結合 1 回あたりに組み込まれるヌクレオチドの数で定義されます。例えば、処理能力の低い野生型の MMLV 逆転写酵素では、cDNA の合成に 60 分以上を要します。それに対して、処理能力の高い改変型の逆転写酵素では、9 kb の cDNA を合成するのに 10 分程度しかかかりません。
RNA は cDNA 合成においてテンプレートの役目をします。トータル RNA は日常的に RT-(q)PCR などのダウンストリームアプリケーションのための cDNA 合成に使用されますが、一方で、特殊なタイプの RNA(例えば、メッセンジャー RNA(mRNA)や miRNA のようなスモール RNA など)は、cDNA ライブラリの構築や miRNA プロファイリングを行う際に、濃縮が必要となる場合があります。
RNA をインタクトに保つことが極めて重要であり、抽出、調製、保存、実験での使用においては、特別な注意が必要となります。RNA の分解を防ぐための最善策は、グローブを着用し、エアロゾルバリアチップでピペット操作を行い、ヌクレアーゼフリーの実験器具と試薬類を使用し、実験エリアを汚染除去することです。
RNA の分離精製には、材料の種類(例えば、血液、組織、細胞、植物など)や実験の目的に応じて、さまざまな方法が利用できます。分離精製プロセスにおける主な目的は、適切な保存と抽出方法に基づいた RNA 分子の安定化、RNase の阻害、および収量の最大化です。最適な精製法では、酵素活性に影響を及ぼす植物組織由来の複合多糖類やフミン酸、そして逆転写酵素の共通の阻害剤となる塩類や金属イオン、エタノール、フェノールのような内因性の化合物を除去します。一度精製した RNA は –80°C で保存し、できるだけ凍結融解を繰り返さないようにします。
微量のゲノム DNA(gDNA)が RNA と一緒に混ざって精製されることがあります。混入した gDNA は逆転写反応の妨げになり、偽陽性、高バックグラウンド、あるいは RT-qPCR における感度の低下につながる可能性があります。
一般的な方法として、gDNA を除去するために、DNase I を精製 RNA に添加処理します。加えた DNase I は、残留して一本鎖 DNA を分解してしまう可能性があるため、cDNA 合成の前に完全に除去しておく必要があります。ただし、DNase I の不活化処理では、RNA の分解や損失をもたらす可能性があります。
DNase I の代替品として、RNA や一本鎖 DNA に影響のない二本鎖特異的 DNase が、混入した gDNA の除去に利用できます。二本鎖特異的 DNase は熱に不安定な性質を持つため、悪影響のない比較的マイルドな温度(例えば 55°C など)で簡単に不活化できます。このような二本鎖特異的かつ熱不安定性の DNase は、逆転写反応に先立ち、精製 RNA と 37°C で 2 分間反応させるだけで良く、ワークフローとしても合理的です(図 1 )。
分子生物学において最も利用されているのは、トリ骨髄芽球症ウイルス(AMV)やモロニーマウス白血病ウイルス(MMLV)の pol 遺伝子に由来する逆転写酵素です。AMV 由来の逆転写酵素は、実験室で cDNA を合成するために分離された最初の酵素群の 1 つでした。AMV 由来の逆転写酵素は、RNA:cDNA ハイブリッド中の RNA 鎖を分解する強い RNase H 活性を持っているため、短鎖の cDNA フラグメント(< 5 kb)を生成します。
MMLV 由来の逆転写酵素は、モノマー構造であることから、よりシンプルなクローニングや、組み換え体への改変が可能であり、代替品として好まれるようになりました。本酵素は、AMV 由来の逆転写酵素に比べると熱安定性が低い一方で、RNase H 活性が低いため、より長鎖の cDNA(<7 kb)をさらに効率よく合成することができます。
cDNA 合成をさらに改善するために、より RNase H 活性が低く(RNase H ドメインの変異、もしくは RNaseH–)、熱安定性が高く(55°C まで)、そして処理能力を高めた(65 倍以上)MMLV 逆転写酵素の改変体が作られました。これらの性質は、cDNA の鎖長と収率の増加、感度の向上、阻害物質に対する耐性の改善、そして反応時間の短縮といった利点をもたらしました(表 1)。
AMV逆転写酵素 | MMLV逆転写酵素 | 改変型 MMLV 逆転写酵素 ( Invitrogen SuperScript IV 逆転写酵素など) | |
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RNase H活性 | 高 | 中 | 低 |
反応温度 (推奨最高値) | 42°C | 37°C | 55°C |
反応時間 | 60 分 | 60 分 | 10 分 |
ターゲットの鎖長 | ≤5 kb | ≤7 kb | ≤12 kb |
相対収率 (困難な条件あるいは最適でない RNA での比較) | 中 | 低 | 高 |
逆転写反応の構成成分には、酵素とプライマーに加えて、RNA テンプレート(ゲノム DNA 除去処理済みのもの)、バッファー、dNTP、DTT、RNase 阻害剤、および RNase フリーの水が含まれます(図 2)。
構成品 | 主な特長 |
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RNA テンプレート | RNA をインタクトに保つことが極めて重要であり、抽出、調製、保存、実験での使用においては、特別な注意が必要となります(ステップ 1 参照)。
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反応バッファー |
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dNTP |
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DTT |
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RNA の分解を抑えるために、通常、反応緩衝液に含まれているか、あるいは反応系に添加します。以下の場合:
既知の RNase が多数存在しますので、それらの作用モードと反応要件に基づいて適切な RNase 阻害剤を選択してください。 | |
以下を用い、RNase を除去します。
混入した RNase は簡単なろ過では除去できず、また熱に安定であることから、オートクレーブした水では十分ではありません。 |
逆転写反応は 三つのメインステップ、すなわち、プライマーのアニーリング、DNA の重合化、そして酵素の不活化を伴います。これらのステップの温度と時間は、プライマーの選択、ターゲットとなる RNA、そして使用する逆転写酵素によって変わります。
この重要ステップは、DNA の重合化にあります。このステップにおける反応温度と反応時間は、選択したプライマーと使用する逆転写酵素によって変わってきます。ランダムヘキサマーを使用する場合、プライマー伸長のために酵素を加えた後、室温(約 25°C)にて 10 分間、反応液をインキュベートすることをお勧めします。
逆転写酵素はそれぞれに耐熱性が異なり、最も高い最適反応温度が決まっています。耐熱性の逆転写酵素を使えば、より高い温度(50 °C など)での反応が可能であるため、酵素活性に悪影響なく、GC 含量の高い RNA や二次構造を持った RNA を変性させることができます(図 3)。そのような酵素による、高温でのインキュベーションは、cDNA の収量や鎖長を増加させ、遺伝子産物の反映を向上させます。
重合化の時間は逆転写酵素の処理能力に依存し、処理能力とは基質との結合 1 回あたりに組み込まれるヌクレオチドの数で定義されます。例えば、処理能力の低い野生型の MMLV 逆転写酵素では、cDNA の合成に 60 分以上を要します。それに対して、処理能力の高い改変型の逆転写酵素では、9 kb の cDNA を合成するのに 10 分程度しかかかりません。
For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.