5 Steps to Multiplexed Fluorescent Western Blotting

マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングでは、正確で定量的な結果と安定したシグナルが得られ、単一のブロットで複数のタンパク質ターゲットを鮮明に測定できるため、より広範に使用されるテクニックになっています。マルチプレックスウェスタンブロッティングでは、新しいイメージングシステムや、ウェスタンブロット検出用の広範な蛍光色素や抗体を用いることで、時間の節約やコストの削減、およびデータの作成と収集での効率改善がもたらされます。

ここでは、お客様による最高の結果の取得を可能にし、各ステップの最適化と失敗を回避するためのサポートを、マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングでのサンプル調製からデータ収集までの5つのステップに分けて解説しています。

マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングの5ステップ

タンパク質ゲル電気泳動用のサンプル調製

ウェスタンブロッティングに用いるタンパク質サンプルは、組織、細胞、細胞分画などの多くの材料から取得されます。これらの材料からタンパク質を分離し精製するメソッドは多数存在しています。

蛍光ウェスタンブロッティング実験用のタンパク質サンプルの調製では、バックグラウンド蛍光に影響するコンタミの混入を回避することが重要です。ブロモフェノールブルーは、イメージング時のバックグラウンド蛍光に影響します。

ウェスタンブロッティングに適合した抽出液を提供する全タンパク質抽出試薬・キットは以下の通りです:

サンプルタイプ目的推奨されるThermo Scientificの試薬・キット
初代培養または哺乳類の細胞または組織全タンパク質の抽出

M-PER Reagent
T-PER Reagent
N-PER Reagent
RIPA Lysis and Extraction Buffer
Pierce IP Lysis Buffer
培養された哺乳類細胞または組織細胞成分の分画または細胞小器官の分離

NE-PER Reagent
Subcellular Fractionation Kits
Mitochondria Isolation Kits
Pierce Cell Surface Protein Isolation Kit
Syn-PER Reagent
Lysosomes Enrichment Kit
細菌細胞全タンパク質の抽出B-PER Reagent
酵母細胞全タンパク質の抽出

Y-PER Reagent
Y-PER Plus Reagent
昆虫細胞(バキュロウイルス)全タンパク質の抽出

I-PER Reagent
植物組織(葉、幹、根、花)全タンパク質の抽出

P-PER Reagent

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タンパク質の定量

タンパク質サンプルの濃度の把握は、電気泳動ステップでゲルにロードするべき適正量の決定に役立ちます。サンプルのタンパク質濃度の測定には、さまざまなタンパク質アッセイが利用できます。タンパク質アッセイ選択ガイドを活用して、各自のニーズに適したタンパク質アッセイの選択にお役立てください。


Thermo Scientific Multiskan Sky吸光マイクロプレートリーダーを使用することで、信頼性の高いタンパク質の定量と解析、およびDNAやRNAの解析、ELISAなどのUV-Vis吸光度測定アプリケーションを実施できます。Multiskan Skyリーダーは、幅広い波長領域(200~1,000 nm)、光路長補正、高速測定を特長としています。オプションのµDropプレートで可能となる超微量分析は、最高16回分の測定をNanoDropで同時実施することに相当します。直感的な操作をもたらすタッチスクリーン式ユーザーインターフェース、およびオンボードソフトウェアと内蔵プロトコルにより、装置での直接測定が迅速に実施できます。また、いずれかの装置を購入したカスタマーには、操作性に優れたThermo Scientific SkanItソフトウェアを無制限に利用できるライセンスが提供され、広範な既製プロトコルを収集した当社のオンラインライブラリにアクセスできます。

リソース

ゲル電気泳動による分子量に基づいたタンパク質分離

マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングの2番目のステップは、調製したタンパク質サンプルをゲル電気泳動で分離することです。ターゲットタンパク質は、タンパク質ゲルの化学的性質とポリアクリルアミド濃度を慎重に選択することで、他のタンパク質から適切に分離できます。よりシャープなバンドパターンを得るには、ポリアクリルアミドのグラジエントゲルの使用をご検討ください。


適切なタンパク質ゲルの選択

ターゲットタンパク質の最適な分離能は、個々のタンパク質に適したタンパク質ゲルを選択することで得られます。当社からは4種類のプレキャストされたタンパク質ゲルが提供されています。どの種類のゲルを選択すべきかは、分離するタンパク質量とサイズによります。

タンパク質に適したゲルを探す
他のサプライヤーのゲルからの移行

目的タンパク質の最適な分離を実現するタンパク質ゲルおよびバッファーをお選びください。

タンパク質サンプルのタイプゲルの種類プレキャストゲルサンプルバッファー*タンパク質ラダー泳動バッファー転写バッファー
少量/翻訳後修飾

広範囲分子量(6~400 kDa)
Bis-TrisBolt Bis-Tris Plus(60 µLまでロード可)Fluorescent Compatible Sample BufferiBright Prestained Protein Ladder
Bolt MOPS SDS Buffer(15~260 kDa)、Bolt MES SDS Buffer(3.5~160 kDa)、少量サンプルにはBolt Antioxidantを添加Bolt Transfer Buffer
NuPAGE Bis-TrisNuPAGE MOPS SDS Buffer(15~260 kDa)、Bolt MES SDS Buffer(3.5~160 kDa)、少量サンプルにはBolt Antioxidantを添加NuPAGE Transfer Buffer
多量

広範囲分子量(6~400 kDa)
Tris-GlycineNovex Tris-Glycine WedgeWell formatNovex Tris-Glycine SDS Running BufferNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
高分子量(40~500 kDa)Tris-AcetateNuPAGE Tris-Acetate GelsSpectra Multicolor High Range Protein LadderNuPAGE Tris-Acetate SDS Running BufferNuPAGE Transfer Buffer
低分子量(2.5~40 kDa)TricineNovex Tricine Mini GelsSpectra Multicolor Low Range Protein LadderNovex Tricing SDS Running BufferNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
*サンプルを70℃で10分間加熱。

サンプルバッファー

ブロモフェノールブルーを含むサンプルバッファーは蛍光を発し、バックグランドを上昇させる場合があります。ブロモフェノールブルーを含むサンプルバッファーを使用する場合は、バックグラウンドの蛍光シグナルを抑えるために、転写前に色素フロントをゲルから流し出したり、転写後に色素を含む部分をメンブレンから切除してください。

ブロモフェノールブルー非含有の蛍光適合サンプルバッファーとして、Invitrogen Fluorescent Compatible Sample Bufferなどの使用を検討してください(カタログ番号LC2570)。


タンパク質ラダー

中分子量タンパク質のマルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングには、iBright Prestained Protein Ladder を分子量マーカーとして使用することをお奨めします。 このマーカーは、電気泳動中にタンパク質バンドを直接可視化し、以下の特長を備えています。

可視光および化学発光と蛍光検出法により視認されるiBright事前染色済みタンパク質ラダー
  • 10種類の青色染色されたタンパク質は、蛍光標識も施されており、直接および近赤外蛍光での可視化が可能です。
  • 化学発光や蛍光検出の直接的可視化を可能にする2種類の非染色タンパク質(30 kDaおよび80 kDa)

標準的な染色済み分子量マーカーも使用できますが、マーカーに蛍光バンドが含まれている場合、過剰なロードはバックグラウンド蛍光を増加させたり隣接レーンにシグナルを漏出させる可能性があるため、ロードする量を最適化する必要があります。iBright Prestained Protein Ladderではゲルにロードする分子量マーカーは少量で済み、可視化および蛍光検出であれば通常は2~4 µLで十分です。

iBright Prestained Protein Ladderの詳細を見る


タンパク質ゲルウェルカムパック

可視光および化学発光と蛍光検出法により視認されるiBright事前染色済みタンパク質ラダー

タンパク質ゲルウェルカムパックは、Invitrogenプレキャストタンパク質ゲルを用いたマルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティング実験を始める際の、コスト効率に優れた選択肢です。タンパク質ゲルウェルカムパックは、各種類のタンパク質ゲルが用意されており、プレキャストタンパク質ミニゲル、バッファー、ラダー、および Mini Gel Tank を含んでいるため、個々に購入するよりも大幅にコストを節約できます。iBright Prestained Protein Ladder および Invitrogen Fluorescent Compatible Sample Buffer(カタログ番号LC2570)は、タンパク質ゲルウェルカムパックには含まれていないため、別途注文する必要があります。

タンパク質ゲルウェルカムパックの詳細を見る

リソース

ゲルからメンブレンへのタンパク質の転写

電気泳動後にタンパク質をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロースまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンへ効率的に転写することは、ウェスタンブロッティングの重要なステップであり、これにより特定タンパク質の免疫検出技術を用いた検出が可能になります。

ゲル転写の電気泳動メソッドは、ウェット転写、セミドライ転写、ドライ転写に分類できます。

以下の選択表を参照して、転写のメソッドおよび必要な装置、バッファー、所要時間を比較してください。

 ウェット転写セミドライ転写ドライ転写
 

Mini Blot Module



XCell II Blot Module


SureLock Tandem
Midi Blot Module


Power Blotter
Systems

iBlot 3 device
iBlot 3 Western Blot Transfer System
キャパシティーブロットモジュール1つにつきミニゲル1枚、タンク1台にブロットモジュール1~2つ最大2ミニブロットブロットモジュール1つにつきミディゲル1枚、タンク1台にブロットモジュール1~2つミニゲル1~4枚、またはミディゲル1~2枚ミディゲル1~2枚またはミニゲル1~4枚
転写時間60分60~120分30分7~10分最短3分
ブロッティング領域(cm)9 x 99 x 99.2 x 14.410 x 18または
21 x 22.5
8.5 x 13.5
転写バッファー容量ブロットモジュール1つあたり220 mL200 mLブロットモジュール1つあたり300 mL

プレカットメンブレン&フィルター:50~100 mL、

専用の転写スタック:バッファー不要

バッファー不要
電源外部外部外部内部内部
必要な装置Mini Gel Tank:最大2つのミニブロットモジュールに対応XCell SureLock Mini-CellSureLock Tandem Midi Gel Tank
 詳細を見る詳細を見る詳細を見る詳細を見る詳細を見る

動画:iBlot 3ウェスタンブロット転写システムを用いたタンパク質ゲル転写がいかに簡単であるかをご確認ください。

転写メンブレン

バックグラウンド蛍光となる主要な要因を排除するには、ニトロセルロースおよび特殊な低蛍光PVDFメンブレンなど自己蛍光の少ないメンブレンとして、Thermo Scientificニトロセルロースメンブレン(カタログ番号88018)および低蛍光PVDF転写メンブレン(カタログ番号22860)などを使用します。メンブレンの取り扱い時は、手袋とメンブレン用の清潔なピンセットを使用し、バックグラウンド蛍光やアーチファクトの原因となるメンブレンの汚染やひっかき傷を最小限に抑えてください。

ヒント:多くのインクは蛍光を発するため、メンブレンに対してペンは使用しないでください。これらの代わりに鉛筆を使用してください。


転写バッファー

以下の表を参照して、お客さまのタンパク質ゲルに適した転写バッファーを選択してください。

タンパク質サンプルのタイプゲルの種類プレキャストゲル転写バッファー
少量/翻訳後修飾

広範囲の分子量(6~400 kDa)
Bis-TrisBolt Bis-Tris Plus(60 µLまでロード可)Bolt Transfer Buffer
NuPAGE Bis-TrisNuPAGE Transfer Buffer
多量

広範囲の分子量(6~400 kDa)
Tris-GlycineNovex Tris-Glycine WedgeWell formatNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
高分子量(40~500 kDa)Tris-AcetateNuPAGE Tris-Acetate GelsNuPAGE Transfer Buffer
低分子量(2.5~40 kDa)TricineNovex Tricine Mini GelsNovex Tris-Glycine Transfer Buffer

リソース

転写されたタンパク質を蛍光標識抗体で検出

抗体および蛍光標識の慎重な選択は、マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングの成功に不可欠です。Download our application note: Fluorescent western blotting - a guide to multiplexingでは、抗体および蛍光標識の選択について詳細に解説しています。

蛍光標識の選択

光学的に異なるスペクトルを有する蛍光色素を選択することで、クロスチャンネル蛍光を回避できます。マルチプレックス実験で選択すべき、特徴的な励起スペクトルおよび発光スペクトルを有する蛍光色素の例を、以下の図1および2に示します。1~4プローブのマルチプレックスウェスタン実験でのiBright FL1500 Imaging Systemに使用可能なマルチプレックス蛍光色素の組み合わせの例については、表1をご覧ください。

表1.iBright FL Imaging Systemでのマルチプレックスを成功させるための蛍光色素の組み合わせ例。

ターゲットの数コンジュゲート1コンジュゲート2コンジュゲート3コンジュゲート4
1Alexa Fluor Plus 647   
2Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546  
3Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546Alexa Fluor Plus 488 
4Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546Alexa Fluor Plus 488Alexa Fluor Plus 800
特徴的な励起スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例

図1.特徴的な励起スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例。この例はFluorescence SpectraViewerで作成したものですが、Alexa Fluor Plus 488とAlexa Fluor 546の蛍光色素の特徴的励起スペクトル(点線)のオーバーラップについては、励起フィルターのレンジ内で最小限になっています。どちらの蛍光色素も発光フィルターの領域内に発光スペクトル(実線)の一部を有していますが、Alexa Fluor 546 は Alexa Fluor Plus 488 用に選択された励起フィルターによって励起されないため、Alexa Fluor 546 からの蛍光は出現せず発光フィルターを通り抜けることはありません。

特徴的な発光スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例

図2.特徴的な発光スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス試験の例。この例はFluorescence SpectraViewerで作成したものですが、Alexa Fluor Plus 680とAlexa Fluor 790の発光スペクトル(実線)は、両者の発光フィルターのレンジ内でオーバーラップしていません。どちらの蛍光色素も励起フィルター1のレンジ内に励起スペクトル(点線)の一部を有していますが、この励起レンジで生成されるAlexa Fluor 790の蛍光は発光フィルター1を通り抜けられる波長外のため、Alexa Fluor 790からの蛍光は当該チャンネルのカメラ検出器には到達しません。

Alexa Fluor Plus Secondary Antibodies

Alexa Fluor Plus二次抗体

希少または貴重なサンプル中の少量ターゲットを蛍光ウェスタンブロットで検出し可視化する必要がありますか?

従来のAlexa Fluor二次抗体との比較:

  • より高いS/N比
  • より低い交差反応性

詳細を見る

特異的な抗体の検索

下記の検索ツールを使用して、目的の抗体を検索します。次にターゲット種または宿主種、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、アプリケーション、およびその他の基準で検索結果を絞むことができます。

検索する


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検出プロセスの自動化

iBind

当社のInvitrogen iBindおよびiBind Flexウェスタンデバイスを使用すると、ブロッキング、抗体反応、洗浄のすべてのステップをハンズフリーで行えます。詳細はthermofisher.com/ibindでご確認ください。


トラブルシューティング

問題考えられる原因解決方法
シグナルが弱い、またはない一次抗体量が不十分
  • 一次抗体の濃度を上げる
  • 一次抗体が十分な力価を有すること、検出する抗原に特異的であることを確認する
  • インキュベーション時間を4℃で一晩ないしは室温で3~6時間に延長する
  • 抗体エンハンサーを使用する
抗体の失活
  • 抗体が適切に保存されていたかを確認する
  • 抗体の使用期限を確認する
  • あらかじめ希釈された抗体を複数回使用することは避ける
露光時間が短すぎる
  • 露光時間を延長する
  • iBright FL1500システムのSmart Exposure機能または他の機器の同等の自動露出機能を使用する
不適切な装置設定
  • 用いる蛍光色素に適した励起および発光領域が選択されていることを確認する
界面活性剤の使用
  • 過剰量の界面活性剤または界面活性剤の性質によりシグナルが洗い流されてしまう場合があるため、界面活性剤の量を減らすか使用しない
ブロッキングバッファーによる抗原のブロック
  • 一部のブロッキング溶液は、ブロットをマスクしたり、抗体に結合する抗原量を低減する場合があり、特に1時間超のブロッキングステップの場合はこれが顕著である
  • 一次抗体を洗浄バッファーで希釈する
  • ブロッキングバッファーの変更を検討する
ゲルにロードするサンプル量の不足
  • ライセートが少なすぎると目的のターゲット量が不足する
  • ライセートまたはサンプルの連続希釈により、ロードすべき最適なタンパク質量を特定する
タンパク質の転写が不十分ないし転写後のタンパク質の損失
  • タンパク質転写条件を確認する
  • 新しいタンパク質をプロービングする場合は再度の最適化が必要な場合あり
非特異バンド目的のターゲットに対する抗体の特異性が不十分
サンプルの完全性が不十分
  • 過熱やプロテアーゼ活性によりサンプルが劣化することでターゲットが分解し、抗体によるターゲットの認識能が低下
マルチプレックス検出における抗体の交差反応
  • 遠縁種由来の一次抗体を選択する
  • 交差吸収性の高い二次抗体を使用する
  • 使用する二次抗体量を減らして最適なパフォーマンスレンジに収める
マルチプレックス時に他のチャンネルからの蛍光の流出(予期しないバンドの出現)
  • 蛍光体スペクトルの視覚化および、スペクトル的に近接したコンジュゲートの回避をするため、特にシグナルが強い場合は、Fluorescence SpectraViewerなどのツールを使用する
  • 使用する蛍光色素がイメージング装置で明瞭に検出できることを確認する
  • 装置の自動露光機能を用いて、各チャンネルに最適な露光時間を特定する
バックグラウンド関連の問題(高い、不均一化、斑点の発生)メンブレンの汚染によるバックグラウンドの上昇
  • メンブレンは、清浄なディッシュ、トレイ、ピンセットを用いて慎重に取り扱う
  • アプリケーションに最適なブロッキングバッファーを選択する(一次抗体の反応はブロッキングバッファーごとに異なり、一般的な動物血清やミルクのようなブロッキングバッファーは交差反応をもたらす場合がある)
タンパク質マーカーやラダーの過剰ロードによるアーチファクト発生
  • ゲルへの分子量マーカーのロード量を削減する
洗浄または希釈液が不適切
  • 洗浄バッファーに0.1~0.2% Tween 20界面活性剤を添加する
  • 二次抗体の希釈液を0.05% Tween 20界面活性剤で調製する
  • 洗浄回数を増やすか洗浄時間を長くする
過剰な量の二次抗体によるバックグラウンドの上昇
  • 標識される蛍光色素に応じて二次抗体の希釈率を最適化する(メーカーの推奨濃度を参照)
メンブレンの乾燥による、まだらで不均一なバックグランド
  • インキュベーションの全ステップでブロット全体が十分にカバーされていることを確認する
  • インキュベーションの各ステップで撹拌が一定であることを確認する
不適切なメンブレンの選択
  • メンブレンのタイプによりバックグラウンドが発生している可能性がある(たとえばPVDFメンブレンは自家蛍光によりバックグラウンドが高くなるので、低蛍光PVDFメンブレンを使用する)
メンブレン上の斑点および指紋
  • メンブレンの取り扱いには清浄なピンセットを用い、メンブレンには直接接触しないようにする(汚れたピンセットなどから付着する微粒子やコンタミも蛍光を発する場合がある)
  • インキュベーショントレイやディッシュは清浄なものを使用する(メタノール洗浄の直後に水ですすぐと、前回使用時の乾燥した残留色素が溶けやすくなる)
  • ウェット式の転写メソッドを用いる場合、転写装置や汚れた消耗品(パッドなど)は斑点の発生源となり得るので、これらを洗浄する
  • 画像取得するブロットの設置前に、イメージング装置の表面をエタノールで清掃し、ホコリ、糸くず、残留物などを取り除く

リソース

蛍光ウェスタンブロットのイメージングとタンパク質の定量

昨今のイメージングソフトウェアの進化や装置の感度向上により、蛍光画像の取得および定量的なウェスタンブロット解析は、より簡単なものとなりました。それでも利用する装置については、検出したい数の蛍光色素を捕らえることができるかどうか、イメージャーが蛍光色素に適したフィルターを備えているかどうかを確認する必要があります。

当社の提供するパワフルで操作性に優れたiBright FL1500イメージングシステムは、高感度かつ効率的なマルチモードでの画像取得を実現します(下のイメージ2を参照)。iBright FL1500では、簡単に4プレックス画像を取得できます。このシステムは大型容量タッチスクリーンインターフェースと高性能デザインのソフトウェアを備えています。

iBright FL1500イメージングシステムの製品詳細を見る
iBright FL1500イメージングシステムのパンフレットをダウンロード


Four-channel imaging of a multiplexed fluorescent western blot
図2.マルチプレックス蛍光ウェスタンブロットの4チャンネルイメージング。同一ブロット上で最大4つの異なるタンパク質の同時イメージングが可能。1-Step Human High-Yield Mini IVT Kit(カタログ番号88890)と適切な発現用クローンを使用し、HAタグRB-1をHeLa細胞抽出物中に発現。得られた反応混合物はSDS-PAGEを行うために段階希釈し、Novex WedgeWell 4~20% Tris-Glycineゲル(カタログ番号XP04200PK2)を用いて電気泳動を行った。PiercePower Blotter(カタログ番号22834)を使用してタンパク質をPVDFメンブレンに転写した後、メンブレンをブロックし、以下の一次抗体を使用してプローブを実施:ニワトリ抗カルレティキュリン(カタログ番号PA1-903)、ウサギ抗HSP90(カタログ番号PA3-013)、マウス抗p23(カタログ番号MA3-414)。メンブレンを洗浄し、TBS-Tween 20と以下の二次抗体を使用してプローブを実施:ヤギ抗ニワトリAlexa Fluor 546(カタログ番号A11040)(黄色に疑似着色)、ヤギ抗ウサギAlexa Fluor Plus 800(カタログ番号A32735)(緑色に疑似着色)、ヤギ抗マウスAlexa Fluor Plus 680(カタログ番号A32729)(赤色に疑似着色)。メンブレンを再洗浄し、Alexa Fluor 488に直接結合したマウス抗HA一次抗体(カタログ番号26183-D488)(青色に疑似着色)とTBS-Tween 20を使用して1時間のプローブを実施。メンブレンを洗浄し、iBright FL1000イメージングシステムでイメージングした。

定量

タンパク質の標準化は、定量的ウェスタンブロッティングの信頼性と再現性を確保するための重要なステップであり、具体的な方法としてはハウスキーピングタンパク質または総タンパク質の標準化が挙げられます。最適な条件下であれば標準化は不要な場合もありますが、サンプルローディングや転写効率などの要素が関与するため、ウェスタンブロットの標準化は不可欠です。ハウスキーピングタンパク質は実験条件の影響を受ける可能性があるため、総タンパク質の標準化のほうが信頼性の高い方法です。ウェスタンブロッティングデータで総タンパク質の標準化を行う場合、Invitrogen No-Stain Protein Labeling Reagentは操作性と手軽さに優れた試薬であり、転写後のメンブレンに適用することで感度の高い線形検出が行えます。

iBright FL1500イメージングシステムには、No-Stain Protein Labeling Reagentやその他多くのメソッドで標準化を簡単に行うためのソフトウェアが付属しています。

No-Stain Protein Labeling Reagentの詳細を見る

以下のアプリケーションノートは、内部ローティングコントロールを使用した標準化の基本原理や、再現性のある有意義なデータを取得するためにウェスタンブロットを正確に標準化する方法を説明しています。ダウンロードしてご覧ください。

アプリケーションノート:Normalization in western blotting to achieve relative quantitation


蛍光ウェスタンブロットのリプローブ

別の抗体でブロットをリプローブするには、Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferを使用してください。Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferは、PVDF膜の再使用を可能にします。これによりウェスタンブロットの最適化プロセスが簡素化され、同じブロットを異なる一次抗体でリプローブして別のターゲットを検出できるようになります。Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferは、低蛍光PVDFメンブレンにのみ使用可能です。

Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferの製品詳細を見る

iWesternワークフロー

ウェスタンブロッティングの開始から完了までを網羅したソリューションが必要ですか?
それともメインとなるブロッティングの特定ステップのみのパフォーマンス向上をお求めですか?

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タンパク質ゲル電気泳動用のサンプル調製

ウェスタンブロッティングに用いるタンパク質サンプルは、組織、細胞、細胞分画などの多くの材料から取得されます。これらの材料からタンパク質を分離し精製するメソッドは多数存在しています。

蛍光ウェスタンブロッティング実験用のタンパク質サンプルの調製では、バックグラウンド蛍光に影響するコンタミの混入を回避することが重要です。ブロモフェノールブルーは、イメージング時のバックグラウンド蛍光に影響します。

ウェスタンブロッティングに適合した抽出液を提供する全タンパク質抽出試薬・キットは以下の通りです:

サンプルタイプ目的推奨されるThermo Scientificの試薬・キット
初代培養または哺乳類の細胞または組織全タンパク質の抽出

M-PER Reagent
T-PER Reagent
N-PER Reagent
RIPA Lysis and Extraction Buffer
Pierce IP Lysis Buffer
培養された哺乳類細胞または組織細胞成分の分画または細胞小器官の分離

NE-PER Reagent
Subcellular Fractionation Kits
Mitochondria Isolation Kits
Pierce Cell Surface Protein Isolation Kit
Syn-PER Reagent
Lysosomes Enrichment Kit
細菌細胞全タンパク質の抽出B-PER Reagent
酵母細胞全タンパク質の抽出

Y-PER Reagent
Y-PER Plus Reagent
昆虫細胞(バキュロウイルス)全タンパク質の抽出

I-PER Reagent
植物組織(葉、幹、根、花)全タンパク質の抽出

P-PER Reagent

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タンパク質の定量

タンパク質サンプルの濃度の把握は、電気泳動ステップでゲルにロードするべき適正量の決定に役立ちます。サンプルのタンパク質濃度の測定には、さまざまなタンパク質アッセイが利用できます。タンパク質アッセイ選択ガイドを活用して、各自のニーズに適したタンパク質アッセイの選択にお役立てください。


Thermo Scientific Multiskan Sky吸光マイクロプレートリーダーを使用することで、信頼性の高いタンパク質の定量と解析、およびDNAやRNAの解析、ELISAなどのUV-Vis吸光度測定アプリケーションを実施できます。Multiskan Skyリーダーは、幅広い波長領域(200~1,000 nm)、光路長補正、高速測定を特長としています。オプションのµDropプレートで可能となる超微量分析は、最高16回分の測定をNanoDropで同時実施することに相当します。直感的な操作をもたらすタッチスクリーン式ユーザーインターフェース、およびオンボードソフトウェアと内蔵プロトコルにより、装置での直接測定が迅速に実施できます。また、いずれかの装置を購入したカスタマーには、操作性に優れたThermo Scientific SkanItソフトウェアを無制限に利用できるライセンスが提供され、広範な既製プロトコルを収集した当社のオンラインライブラリにアクセスできます。

リソース

ゲル電気泳動による分子量に基づいたタンパク質分離

マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングの2番目のステップは、調製したタンパク質サンプルをゲル電気泳動で分離することです。ターゲットタンパク質は、タンパク質ゲルの化学的性質とポリアクリルアミド濃度を慎重に選択することで、他のタンパク質から適切に分離できます。よりシャープなバンドパターンを得るには、ポリアクリルアミドのグラジエントゲルの使用をご検討ください。


適切なタンパク質ゲルの選択

ターゲットタンパク質の最適な分離能は、個々のタンパク質に適したタンパク質ゲルを選択することで得られます。当社からは4種類のプレキャストされたタンパク質ゲルが提供されています。どの種類のゲルを選択すべきかは、分離するタンパク質量とサイズによります。

タンパク質に適したゲルを探す
他のサプライヤーのゲルからの移行

目的タンパク質の最適な分離を実現するタンパク質ゲルおよびバッファーをお選びください。

タンパク質サンプルのタイプゲルの種類プレキャストゲルサンプルバッファー*タンパク質ラダー泳動バッファー転写バッファー
少量/翻訳後修飾

広範囲分子量(6~400 kDa)
Bis-TrisBolt Bis-Tris Plus(60 µLまでロード可)Fluorescent Compatible Sample BufferiBright Prestained Protein Ladder
Bolt MOPS SDS Buffer(15~260 kDa)、Bolt MES SDS Buffer(3.5~160 kDa)、少量サンプルにはBolt Antioxidantを添加Bolt Transfer Buffer
NuPAGE Bis-TrisNuPAGE MOPS SDS Buffer(15~260 kDa)、Bolt MES SDS Buffer(3.5~160 kDa)、少量サンプルにはBolt Antioxidantを添加NuPAGE Transfer Buffer
多量

広範囲分子量(6~400 kDa)
Tris-GlycineNovex Tris-Glycine WedgeWell formatNovex Tris-Glycine SDS Running BufferNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
高分子量(40~500 kDa)Tris-AcetateNuPAGE Tris-Acetate GelsSpectra Multicolor High Range Protein LadderNuPAGE Tris-Acetate SDS Running BufferNuPAGE Transfer Buffer
低分子量(2.5~40 kDa)TricineNovex Tricine Mini GelsSpectra Multicolor Low Range Protein LadderNovex Tricing SDS Running BufferNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
*サンプルを70℃で10分間加熱。

サンプルバッファー

ブロモフェノールブルーを含むサンプルバッファーは蛍光を発し、バックグランドを上昇させる場合があります。ブロモフェノールブルーを含むサンプルバッファーを使用する場合は、バックグラウンドの蛍光シグナルを抑えるために、転写前に色素フロントをゲルから流し出したり、転写後に色素を含む部分をメンブレンから切除してください。

ブロモフェノールブルー非含有の蛍光適合サンプルバッファーとして、Invitrogen Fluorescent Compatible Sample Bufferなどの使用を検討してください(カタログ番号LC2570)。


タンパク質ラダー

中分子量タンパク質のマルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングには、iBright Prestained Protein Ladder を分子量マーカーとして使用することをお奨めします。 このマーカーは、電気泳動中にタンパク質バンドを直接可視化し、以下の特長を備えています。

可視光および化学発光と蛍光検出法により視認されるiBright事前染色済みタンパク質ラダー
  • 10種類の青色染色されたタンパク質は、蛍光標識も施されており、直接および近赤外蛍光での可視化が可能です。
  • 化学発光や蛍光検出の直接的可視化を可能にする2種類の非染色タンパク質(30 kDaおよび80 kDa)

標準的な染色済み分子量マーカーも使用できますが、マーカーに蛍光バンドが含まれている場合、過剰なロードはバックグラウンド蛍光を増加させたり隣接レーンにシグナルを漏出させる可能性があるため、ロードする量を最適化する必要があります。iBright Prestained Protein Ladderではゲルにロードする分子量マーカーは少量で済み、可視化および蛍光検出であれば通常は2~4 µLで十分です。

iBright Prestained Protein Ladderの詳細を見る


タンパク質ゲルウェルカムパック

可視光および化学発光と蛍光検出法により視認されるiBright事前染色済みタンパク質ラダー

タンパク質ゲルウェルカムパックは、Invitrogenプレキャストタンパク質ゲルを用いたマルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティング実験を始める際の、コスト効率に優れた選択肢です。タンパク質ゲルウェルカムパックは、各種類のタンパク質ゲルが用意されており、プレキャストタンパク質ミニゲル、バッファー、ラダー、および Mini Gel Tank を含んでいるため、個々に購入するよりも大幅にコストを節約できます。iBright Prestained Protein Ladder および Invitrogen Fluorescent Compatible Sample Buffer(カタログ番号LC2570)は、タンパク質ゲルウェルカムパックには含まれていないため、別途注文する必要があります。

タンパク質ゲルウェルカムパックの詳細を見る

リソース

ゲルからメンブレンへのタンパク質の転写

電気泳動後にタンパク質をポリアクリルアミドゲルからニトロセルロースまたはポリ二フッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンへ効率的に転写することは、ウェスタンブロッティングの重要なステップであり、これにより特定タンパク質の免疫検出技術を用いた検出が可能になります。

ゲル転写の電気泳動メソッドは、ウェット転写、セミドライ転写、ドライ転写に分類できます。

以下の選択表を参照して、転写のメソッドおよび必要な装置、バッファー、所要時間を比較してください。

 ウェット転写セミドライ転写ドライ転写
 

Mini Blot Module



XCell II Blot Module


SureLock Tandem
Midi Blot Module


Power Blotter
Systems

iBlot 3 device
iBlot 3 Western Blot Transfer System
キャパシティーブロットモジュール1つにつきミニゲル1枚、タンク1台にブロットモジュール1~2つ最大2ミニブロットブロットモジュール1つにつきミディゲル1枚、タンク1台にブロットモジュール1~2つミニゲル1~4枚、またはミディゲル1~2枚ミディゲル1~2枚またはミニゲル1~4枚
転写時間60分60~120分30分7~10分最短3分
ブロッティング領域(cm)9 x 99 x 99.2 x 14.410 x 18または
21 x 22.5
8.5 x 13.5
転写バッファー容量ブロットモジュール1つあたり220 mL200 mLブロットモジュール1つあたり300 mL

プレカットメンブレン&フィルター:50~100 mL、

専用の転写スタック:バッファー不要

バッファー不要
電源外部外部外部内部内部
必要な装置Mini Gel Tank:最大2つのミニブロットモジュールに対応XCell SureLock Mini-CellSureLock Tandem Midi Gel Tank
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動画:iBlot 3ウェスタンブロット転写システムを用いたタンパク質ゲル転写がいかに簡単であるかをご確認ください。

転写メンブレン

バックグラウンド蛍光となる主要な要因を排除するには、ニトロセルロースおよび特殊な低蛍光PVDFメンブレンなど自己蛍光の少ないメンブレンとして、Thermo Scientificニトロセルロースメンブレン(カタログ番号88018)および低蛍光PVDF転写メンブレン(カタログ番号22860)などを使用します。メンブレンの取り扱い時は、手袋とメンブレン用の清潔なピンセットを使用し、バックグラウンド蛍光やアーチファクトの原因となるメンブレンの汚染やひっかき傷を最小限に抑えてください。

ヒント:多くのインクは蛍光を発するため、メンブレンに対してペンは使用しないでください。これらの代わりに鉛筆を使用してください。


転写バッファー

以下の表を参照して、お客さまのタンパク質ゲルに適した転写バッファーを選択してください。

タンパク質サンプルのタイプゲルの種類プレキャストゲル転写バッファー
少量/翻訳後修飾

広範囲の分子量(6~400 kDa)
Bis-TrisBolt Bis-Tris Plus(60 µLまでロード可)Bolt Transfer Buffer
NuPAGE Bis-TrisNuPAGE Transfer Buffer
多量

広範囲の分子量(6~400 kDa)
Tris-GlycineNovex Tris-Glycine WedgeWell formatNovex Tris-Glycine Transfer Buffer
高分子量(40~500 kDa)Tris-AcetateNuPAGE Tris-Acetate GelsNuPAGE Transfer Buffer
低分子量(2.5~40 kDa)TricineNovex Tricine Mini GelsNovex Tris-Glycine Transfer Buffer

リソース

転写されたタンパク質を蛍光標識抗体で検出

抗体および蛍光標識の慎重な選択は、マルチプレックス蛍光ウェスタンブロッティングの成功に不可欠です。Download our application note: Fluorescent western blotting - a guide to multiplexingでは、抗体および蛍光標識の選択について詳細に解説しています。

蛍光標識の選択

光学的に異なるスペクトルを有する蛍光色素を選択することで、クロスチャンネル蛍光を回避できます。マルチプレックス実験で選択すべき、特徴的な励起スペクトルおよび発光スペクトルを有する蛍光色素の例を、以下の図1および2に示します。1~4プローブのマルチプレックスウェスタン実験でのiBright FL1500 Imaging Systemに使用可能なマルチプレックス蛍光色素の組み合わせの例については、表1をご覧ください。

表1.iBright FL Imaging Systemでのマルチプレックスを成功させるための蛍光色素の組み合わせ例。

ターゲットの数コンジュゲート1コンジュゲート2コンジュゲート3コンジュゲート4
1Alexa Fluor Plus 647   
2Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546  
3Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546Alexa Fluor Plus 488 
4Alexa Fluor Plus 647Alexa Fluor 546Alexa Fluor Plus 488Alexa Fluor Plus 800
特徴的な励起スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例

図1.特徴的な励起スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例。この例はFluorescence SpectraViewerで作成したものですが、Alexa Fluor Plus 488とAlexa Fluor 546の蛍光色素の特徴的励起スペクトル(点線)のオーバーラップについては、励起フィルターのレンジ内で最小限になっています。どちらの蛍光色素も発光フィルターの領域内に発光スペクトル(実線)の一部を有していますが、Alexa Fluor 546 は Alexa Fluor Plus 488 用に選択された励起フィルターによって励起されないため、Alexa Fluor 546 からの蛍光は出現せず発光フィルターを通り抜けることはありません。

特徴的な発光スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス実験の例

図2.特徴的な発光スペクトルを有する蛍光色素を慎重に選択したマルチプレックス試験の例。この例はFluorescence SpectraViewerで作成したものですが、Alexa Fluor Plus 680とAlexa Fluor 790の発光スペクトル(実線)は、両者の発光フィルターのレンジ内でオーバーラップしていません。どちらの蛍光色素も励起フィルター1のレンジ内に励起スペクトル(点線)の一部を有していますが、この励起レンジで生成されるAlexa Fluor 790の蛍光は発光フィルター1を通り抜けられる波長外のため、Alexa Fluor 790からの蛍光は当該チャンネルのカメラ検出器には到達しません。

Alexa Fluor Plus Secondary Antibodies

Alexa Fluor Plus二次抗体

希少または貴重なサンプル中の少量ターゲットを蛍光ウェスタンブロットで検出し可視化する必要がありますか?

従来のAlexa Fluor二次抗体との比較:

  • より高いS/N比
  • より低い交差反応性

詳細を見る

特異的な抗体の検索

下記の検索ツールを使用して、目的の抗体を検索します。次にターゲット種または宿主種、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、アプリケーション、およびその他の基準で検索結果を絞むことができます。

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検出プロセスの自動化

iBind

当社のInvitrogen iBindおよびiBind Flexウェスタンデバイスを使用すると、ブロッキング、抗体反応、洗浄のすべてのステップをハンズフリーで行えます。詳細はthermofisher.com/ibindでご確認ください。


トラブルシューティング

問題考えられる原因解決方法
シグナルが弱い、またはない一次抗体量が不十分
  • 一次抗体の濃度を上げる
  • 一次抗体が十分な力価を有すること、検出する抗原に特異的であることを確認する
  • インキュベーション時間を4℃で一晩ないしは室温で3~6時間に延長する
  • 抗体エンハンサーを使用する
抗体の失活
  • 抗体が適切に保存されていたかを確認する
  • 抗体の使用期限を確認する
  • あらかじめ希釈された抗体を複数回使用することは避ける
露光時間が短すぎる
  • 露光時間を延長する
  • iBright FL1500システムのSmart Exposure機能または他の機器の同等の自動露出機能を使用する
不適切な装置設定
  • 用いる蛍光色素に適した励起および発光領域が選択されていることを確認する
界面活性剤の使用
  • 過剰量の界面活性剤または界面活性剤の性質によりシグナルが洗い流されてしまう場合があるため、界面活性剤の量を減らすか使用しない
ブロッキングバッファーによる抗原のブロック
  • 一部のブロッキング溶液は、ブロットをマスクしたり、抗体に結合する抗原量を低減する場合があり、特に1時間超のブロッキングステップの場合はこれが顕著である
  • 一次抗体を洗浄バッファーで希釈する
  • ブロッキングバッファーの変更を検討する
ゲルにロードするサンプル量の不足
  • ライセートが少なすぎると目的のターゲット量が不足する
  • ライセートまたはサンプルの連続希釈により、ロードすべき最適なタンパク質量を特定する
タンパク質の転写が不十分ないし転写後のタンパク質の損失
  • タンパク質転写条件を確認する
  • 新しいタンパク質をプロービングする場合は再度の最適化が必要な場合あり
非特異バンド目的のターゲットに対する抗体の特異性が不十分
サンプルの完全性が不十分
  • 過熱やプロテアーゼ活性によりサンプルが劣化することでターゲットが分解し、抗体によるターゲットの認識能が低下
マルチプレックス検出における抗体の交差反応
  • 遠縁種由来の一次抗体を選択する
  • 交差吸収性の高い二次抗体を使用する
  • 使用する二次抗体量を減らして最適なパフォーマンスレンジに収める
マルチプレックス時に他のチャンネルからの蛍光の流出(予期しないバンドの出現)
  • 蛍光体スペクトルの視覚化および、スペクトル的に近接したコンジュゲートの回避をするため、特にシグナルが強い場合は、Fluorescence SpectraViewerなどのツールを使用する
  • 使用する蛍光色素がイメージング装置で明瞭に検出できることを確認する
  • 装置の自動露光機能を用いて、各チャンネルに最適な露光時間を特定する
バックグラウンド関連の問題(高い、不均一化、斑点の発生)メンブレンの汚染によるバックグラウンドの上昇
  • メンブレンは、清浄なディッシュ、トレイ、ピンセットを用いて慎重に取り扱う
  • アプリケーションに最適なブロッキングバッファーを選択する(一次抗体の反応はブロッキングバッファーごとに異なり、一般的な動物血清やミルクのようなブロッキングバッファーは交差反応をもたらす場合がある)
タンパク質マーカーやラダーの過剰ロードによるアーチファクト発生
  • ゲルへの分子量マーカーのロード量を削減する
洗浄または希釈液が不適切
  • 洗浄バッファーに0.1~0.2% Tween 20界面活性剤を添加する
  • 二次抗体の希釈液を0.05% Tween 20界面活性剤で調製する
  • 洗浄回数を増やすか洗浄時間を長くする
過剰な量の二次抗体によるバックグラウンドの上昇
  • 標識される蛍光色素に応じて二次抗体の希釈率を最適化する(メーカーの推奨濃度を参照)
メンブレンの乾燥による、まだらで不均一なバックグランド
  • インキュベーションの全ステップでブロット全体が十分にカバーされていることを確認する
  • インキュベーションの各ステップで撹拌が一定であることを確認する
不適切なメンブレンの選択
  • メンブレンのタイプによりバックグラウンドが発生している可能性がある(たとえばPVDFメンブレンは自家蛍光によりバックグラウンドが高くなるので、低蛍光PVDFメンブレンを使用する)
メンブレン上の斑点および指紋
  • メンブレンの取り扱いには清浄なピンセットを用い、メンブレンには直接接触しないようにする(汚れたピンセットなどから付着する微粒子やコンタミも蛍光を発する場合がある)
  • インキュベーショントレイやディッシュは清浄なものを使用する(メタノール洗浄の直後に水ですすぐと、前回使用時の乾燥した残留色素が溶けやすくなる)
  • ウェット式の転写メソッドを用いる場合、転写装置や汚れた消耗品(パッドなど)は斑点の発生源となり得るので、これらを洗浄する
  • 画像取得するブロットの設置前に、イメージング装置の表面をエタノールで清掃し、ホコリ、糸くず、残留物などを取り除く

リソース

蛍光ウェスタンブロットのイメージングとタンパク質の定量

昨今のイメージングソフトウェアの進化や装置の感度向上により、蛍光画像の取得および定量的なウェスタンブロット解析は、より簡単なものとなりました。それでも利用する装置については、検出したい数の蛍光色素を捕らえることができるかどうか、イメージャーが蛍光色素に適したフィルターを備えているかどうかを確認する必要があります。

当社の提供するパワフルで操作性に優れたiBright FL1500イメージングシステムは、高感度かつ効率的なマルチモードでの画像取得を実現します(下のイメージ2を参照)。iBright FL1500では、簡単に4プレックス画像を取得できます。このシステムは大型容量タッチスクリーンインターフェースと高性能デザインのソフトウェアを備えています。

iBright FL1500イメージングシステムの製品詳細を見る
iBright FL1500イメージングシステムのパンフレットをダウンロード


Four-channel imaging of a multiplexed fluorescent western blot
図2.マルチプレックス蛍光ウェスタンブロットの4チャンネルイメージング。同一ブロット上で最大4つの異なるタンパク質の同時イメージングが可能。1-Step Human High-Yield Mini IVT Kit(カタログ番号88890)と適切な発現用クローンを使用し、HAタグRB-1をHeLa細胞抽出物中に発現。得られた反応混合物はSDS-PAGEを行うために段階希釈し、Novex WedgeWell 4~20% Tris-Glycineゲル(カタログ番号XP04200PK2)を用いて電気泳動を行った。PiercePower Blotter(カタログ番号22834)を使用してタンパク質をPVDFメンブレンに転写した後、メンブレンをブロックし、以下の一次抗体を使用してプローブを実施:ニワトリ抗カルレティキュリン(カタログ番号PA1-903)、ウサギ抗HSP90(カタログ番号PA3-013)、マウス抗p23(カタログ番号MA3-414)。メンブレンを洗浄し、TBS-Tween 20と以下の二次抗体を使用してプローブを実施:ヤギ抗ニワトリAlexa Fluor 546(カタログ番号A11040)(黄色に疑似着色)、ヤギ抗ウサギAlexa Fluor Plus 800(カタログ番号A32735)(緑色に疑似着色)、ヤギ抗マウスAlexa Fluor Plus 680(カタログ番号A32729)(赤色に疑似着色)。メンブレンを再洗浄し、Alexa Fluor 488に直接結合したマウス抗HA一次抗体(カタログ番号26183-D488)(青色に疑似着色)とTBS-Tween 20を使用して1時間のプローブを実施。メンブレンを洗浄し、iBright FL1000イメージングシステムでイメージングした。

定量

タンパク質の標準化は、定量的ウェスタンブロッティングの信頼性と再現性を確保するための重要なステップであり、具体的な方法としてはハウスキーピングタンパク質または総タンパク質の標準化が挙げられます。最適な条件下であれば標準化は不要な場合もありますが、サンプルローディングや転写効率などの要素が関与するため、ウェスタンブロットの標準化は不可欠です。ハウスキーピングタンパク質は実験条件の影響を受ける可能性があるため、総タンパク質の標準化のほうが信頼性の高い方法です。ウェスタンブロッティングデータで総タンパク質の標準化を行う場合、Invitrogen No-Stain Protein Labeling Reagentは操作性と手軽さに優れた試薬であり、転写後のメンブレンに適用することで感度の高い線形検出が行えます。

iBright FL1500イメージングシステムには、No-Stain Protein Labeling Reagentやその他多くのメソッドで標準化を簡単に行うためのソフトウェアが付属しています。

No-Stain Protein Labeling Reagentの詳細を見る

以下のアプリケーションノートは、内部ローティングコントロールを使用した標準化の基本原理や、再現性のある有意義なデータを取得するためにウェスタンブロットを正確に標準化する方法を説明しています。ダウンロードしてご覧ください。

アプリケーションノート:Normalization in western blotting to achieve relative quantitation


蛍光ウェスタンブロットのリプローブ

別の抗体でブロットをリプローブするには、Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferを使用してください。Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferは、PVDF膜の再使用を可能にします。これによりウェスタンブロットの最適化プロセスが簡素化され、同じブロットを異なる一次抗体でリプローブして別のターゲットを検出できるようになります。Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferは、低蛍光PVDFメンブレンにのみ使用可能です。

Restore Fluorescent Western Blot Stripping Bufferの製品詳細を見る

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For Research Use Only. Not for use in diagnostic procedures.